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68-1

「決戦まで勝ち残ろうね、みんな」

「はいっ」

「もちろんですわ」

「のじゃ」


 俺たちの仕事はそっちではないのだが……。

 だがどうやら、俺以外の四人は優勝を目指しているようだ。


「そういえば、王都剣術大会は毎年催されていると聞きましたけれど、去年の優勝者はどなたですの?」

「それがね、マリアちゃん。なんと小さな男の子なんだよ!」

「子供が優勝したんですか!?」


 俺たちは驚いた。


「どこに住んでてなにをしているのかわからない謎の剣士で、すっごい剣さばきで優勝を勝ち取ったんだよ。アタシもその子と予選で戦ったけど、まるで歯が立たなかったよ。まるで風みたいな」


 謎めいた少年剣士か。


「名前はなんていうのですか?」

「ベオウルフ」


 ベオウルフ。

 それが少年剣士の名だった。


「ベオウルフは当然今年も参加するだろうし、優勝するつもりならベオウルフにはぜったいに勝たなくちゃならないんだよね」


 そうなると、優勝を勝ち取るのはそうとう難しい。

 俺たちでは歯が立たないエレオノーラさんを負かした相手になんて、万が一にも勝ち目はない。


「アタシ、ベオウルフに勝つために剣の腕を磨きに磨きまくったのよ。今年はなんとしてもベオウルフをやっつけるわ!」


 エレオノーラさんはやる気に満ちていた。

 その熱が移ったらしく、プリシラとマリアも「はいっ」と気合の入った返事をしていた。

 俺は……うっかり死なない程度にがんばるとしよう。


 それから俺たちは五人で食卓を囲み、昼食を楽しんだ。

 プリシラのつくった鶏肉のトマト煮は絶品だった。

 甘酸っぱいトマトの味がしみ込んだ鶏肉や野菜が口の中でほろほろとくずれる。


「めっちゃおいしい! プリシラちゃんは天才シェフだよ!」

「おかわりも――」

「おかわりっ」

「はいっ」


 プリシラはくすくすと笑う。


 パンもふんわりとした触感と、生地に練りこまれたクルミの歯ごたえがたまらない。

 このクルミのパンもプリシラが焼いたものだ。ケルタスに滞在していたときに『夏のクジラ亭』のコック、ヴィットリオさんに教えてもらったのだから、おいしくないわけがない。


「プリシラちゃんは将来、料理人になるの?」

「いえ、わたしの将来の夢は――」


 そこでいったん言葉を止め、俺を見つめてくる。

 無言のまなざし。


「アッシュちゃんのお嫁さん?」

「そ、そんな大それたことっ――ないとは言いませんがっ」


 プリシラは赤らめたほっぺに手を添えて照れていた。


「エレオノーラ。おぬしもいい年じゃろう。婚約者はおらんのか?」

「お見合いは何度かしたことあるんだけどね」

「いい相手が見つからなかったのか」

「っていうか、全員倒しちゃった」


 倒した!?

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