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67-7

「それはともかくとして、おなかへったー」


 エレオノーラさんがおなかをさする。

 懐中時計に目をやると、針はちょうど昼食の時刻を示していた。

 剣の稽古はここまでだな。


「それじゃーみんな、またねー」


 ひらひらと手を振りながら背を向けるエレオノーラさん。

 それをプリシラが引き留めた。


「待ってください、エレオノーラさま。よろしければわたしたちの『シア荘』でいっしょにお昼ごはんを食べませんか?」

「えっ、いいの?」

「ぜひとも、ですっ」


 背を向けていたエレオノーラさんがくるりと反転し、小走りでこちらに戻ってきた。


「もしかして、プリシラちゃんが手料理をふるまってくれるの?」

「はいっ。今日は鶏肉と野菜のトマト煮にしようかと思っています」

「うおーっ! めちゃくちゃおいしそうーっ」


 興奮している。


「よかったのう、エレオノーラ。プリシラの料理の腕前は高級料理店のシェフに匹敵するのじゃからな」

「マジで!? 超超超楽しみーっ」

「てへへ」


 照れ笑いを浮かべるプリシラ。否定しないところを見ると、自信はあるようだ。

 それは決してうぬぼれではない。

 プリシラの料理がどれほどのものかはよく知っている。俺も期待で胸が高鳴っていた。


 それから『シア荘』に戻った俺たちは昼食の支度をした。

 大事な味付けはプリシラとマリアにまかせ、俺とスセリとエレオノーラさんは野菜を洗ったり皮をむいたり切ったり、食卓をきれいにしたりといった手伝いをした。


「エレオノーラさんはお客さんなんですから、座っててください」

「ひどい! アッシュちゃん! アタシはのけ者なの!?」

「いえ、そういう意味で言ったんじゃ――」

「なーんて、冗談冗談」


 エレオノーラさんはぺろりと舌を出した。

 本当におちゃめだな、この人……。

 年齢は俺より上だろうが、精神的なそれは子供のそのものだ。


「アタシ、じっとしてるの苦手だからさ、手伝わせてよ」


 そう言って包丁を手にし、ニヤリとする。


「必殺の剣技、見せてあげよう!」

「普通に切ってください」


 準備が整い、鍋の中に鶏肉と野菜を入れる。

 ぐつぐつと煮える鍋。


「そろそろできたかな?」

「まだ入れたばかりですよ!?」


 スープの仕込みはあらかじめしてあったから、そう時間はかからないはず。

 具がよく煮込まれてやわらかくなるまで、しばらく居間で待つことにした。


「エレオノーラ。おぬしの家は騎士の家系らしいが、位はどれほどのものなのじゃ」

「あー、ウチはぜんぜんへっぽこ。フロスト家なんて知らないでしょ?」

「知らんのじゃ」


 父親の爵位を尋ねてみたところ、俺やマリアの父親よりも低い、領地を持つのを許されていない爵位だった。


「でもアタシ、剣の腕に関しては騎士団でサイキョーだから!」


 えっへん、と胸を張るエレオノーラさん。

 冗談めかしているものの、その実力が本物なのは俺たちはよく知っている。

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