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67-3

 そういえば、ロッシュローブ教団の刺客のナイトホークとも互角に戦っていた。

 ギルド長としての実務だけでなく、戦いを伴う冒険者としても優秀なのか。


「すごいんですね、キルステンさん」

「私などくだらん人間だ」


 謙遜というより卑下に近い口調。

 自分を侮蔑しているように感じられ、そこに彼の危うさを感じた。

 妻と子供を教団に殺された過去。

 それが彼に心の傷を負わせたのだろうか。


「お前にこれを渡す」


 キルステンさんが渡してきたのは白い花の小さな金細工だった。

 俺への贈り物――というわけではなさそうだ。


「剣術大会が開催されている間は、常にこれを胸につけていろ。それが冒険者ギルドの人間である目印だ」


 つまり、剣術大会にもぐりこんだ仲間をさがすにはこれをつけている人間をさがせばいいわけだ。

 続けてキルステンさんは同じ金細工を三つ渡してきた。プリシラ、マリア、スセリの分だ。


「教団をさがすのに専念するために、最初にわざと負ければいいのでしょうか」

「不自然な動きをしてギルドの人間だとさとられたくない。そこは意識するな」


 王都剣術大会には諸外国からの要人も多く出席する。

 王国騎士団と連携して彼らを護衛するのもギルドの役目だとキルステンさんは説明した。


「……とっくに時間は過ぎているな」


 キルステンさんが懐中時計に目をやる。

 なんの時間だ……?

 と、そのとき、部屋の扉がノックされた。

 キルステンさんの「入れ」という合図の直後、扉が開いた。


「いやー、ごめんごめん。ちょーっと遅れちゃったかなー?」


 まず、印象的だったのは、燃えるような深紅の長髪だった。

 金属の胸当て。

 腰につるした剣。

 その20代くらいの女性が騎士であるのが一目でわかった。


「だいぶ遅刻だ」

「なかなか辻馬車がつかまんなくてさー。ごめんね、エトガーちゃん」


 ちゃん……?

 赤髪の女性は言葉とは裏腹にまったく悪びれていないようす。

 女性と目が合う。

 女性はにっこりと笑顔になった。


「キミがアッシュちゃんだね。アタシはエレオノーラ。王国騎士団の下っ端でっす。よろしくね」


 俺の手を両手で取ってぎゅっと握る。

 あたたかくてやわらかい手だ。


「アッシュちゃんて歳はいくつ? お酒飲める?」

「えっと、17です」

「じゃあ、アタシのほうが年上だねっ。お姉さまと呼びたまえ――なんちって」


 初対面であるにもかかわらず、ぐいぐい距離を詰められて面食らってしまう。

 きさくな人だ。


「アッシュ。お前たちはエレオノーラと共に剣術大会に出場し、ロッシュローブ教団をさぐってもらう」

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