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67-2

「わたくし、『シア荘』に一票を投じますわ」

「わたしもですっ。『シア荘』に一票ですーっ」

「スセリはどうだ?」

「今回はおぬしに譲ろうではないか」


 そういうわけで、俺たちの住む家の名前は『シア荘』に決定したのだった。



「『シア荘』か。わかった。住所にもそう登録しておこう」


 後日、仕事をもらいに冒険者ギルドに行ったとき、ギルド長のエトガー・キルステンさんにも家の名前の件を伝えた。


「今さらですけど、俺たちで勝手に名前を決めてよかったんですかね」

「本当に今さらだな。だが、別に構わん。手続きをすればいいだけだからな」

「もとはなんて名前だったんですか?」

「グラスブリーズ荘だが、『シア荘』のほうがしゃれていると私は思う」

「あ、ありがとうございます」


 それから俺たちは仕事の話になった。

 いつもは他の冒険者と同じく掲示板に貼られた依頼を受けているのだが、今回はシヴ山の魔物討伐のときと同じく、ギルド長直々の依頼だった。


 王都剣術大会。

 年に一度、その催しが開かれる。

 名前のとおり、剣の腕前を競う大会だという。

 大会には毎回、剣の腕に覚えのある者たちが集って闘う。

 そして大会を優勝者は王都一の剣士という名誉が得られるのだ。


 王都剣術大会に参加せよ。

 それが今回の依頼。


 今年の王都剣術大会に暗殺組織、ロッシュローブ教団が紛れ込むという情報をギルドは得ていた。

 王都剣術大会は国を挙げた盛大な大会。大会期間中は王都中がお祭りのように盛り上がり、諸外国から大勢の人々がやってくる。

 そんなところにロッシュローブ教団がよからぬことを起こせば、大惨事は必至。外交にも悪影響を及ぼすだろう。

 俺たちは参加者に扮したロッシュローブ教団を見つけだして対処し、最悪の事態を阻止するのだ。


「キルステンさん、俺、剣術はさっぱりなんですが」

「そうだとしたら、今日まで生き延びてはこれまい」

「買いかぶりですよ」

「別に負けても構わん。大会内部に潜り込んでいればそれでいい。大会関係者にもギルドの人間を潜り込ませているから、彼らと協力してロッシュローブ教団を見つけだせ」


 そうか、別に勝つ必要はないんだな。

 というか、ヘタに勝ち残って目立ったら任務に支障が出るな。


「王都剣術大会か……」


 キルステンさんがそうつぶやいて背後の棚に目をやる。

 棚には書物や賞状、置物などが並んでいる。

 その中に金色のトロフィーがあった。


 第67回王都剣術大会優勝者。

 トロフィーの台座にはそう刻まれていた。


「キルステンさん、優勝者だったんですか!」

「昔の話だ」


 今回の大会が第77回だから10年前だ。

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