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66-7

 ダグとミクが教会の孤児たちと仲良くできていたのを見て安心した。

 それから俺たちは宿屋『ブーゲンビリア』へと足を運んだ。


「いらっしゃ――」


 ロビーの受付には宿の娘、フレデリカが立っていた。

 退屈だから本でも読んでいるのだろうか。彼女はうつむいていたが、ふと顔を上げたときに俺たちの姿を見て一変し、こちらに駆けよってきた。


「帰ってきてたんだー、アッシュさーん」

「ただいま、フレデリカ」


 そう言って彼女の頭に伸ばしかけていた手を引っ込めた。

 プリシラにいつもそうしているクセがつい出てしまった。


「アッシュさんにー、プリシラにー、マリアにー、スセリ、と。よかったー。全員いるねー」

「フレデリカも元気そうでよかった」

「まー、私はなんの変哲もない日常を送っていたんでー」

「けど、受付に立つならもう少し愛想よくしたほうがいいぞ」

「はいはい、わかってまーす」

「勉強は毎日ちゃんとしてたか?」

「欠かさずやってましたよー」


 証拠とばかりにフレデリカは数学のノートを見せてきた。

 ノートを開いてみると確かに、びっしりと数式が書かれている。

 教科書にも書き込みがたくさんあり、熱心さが伝わってきた。


「フレデリカ。なんでノートと教科書を持っていたんだ? 自宅に置いてこなかったのか?」

「お店番しながらお勉強していたのですね」

「プリシラ正解ー」


 ほめるべきか叱るべきか……。

 フレデリカは「えっへん」と胸を張っていた。


「歴史の教科書にも載ってる偉い天文学者さんのグエなんとかさんって人も、学生時代は仕事をしながら勉強していたんですよ。それよりも――」


 フレデリカが俺の腕に自分の腕を絡めてくる。

 プリシラとマリアがぎょっと目をむく。


「フレデリカさま!?」

「旅の話をしてくださいよー。どんな冒険してきたんですかー?」

「えっと、だな……」

「こら! フレデリカ!」


 フレデリカに旅の話をせがまれていたそのとき、彼女の母親が現れて娘をどなりつけた。

 ささっと俺の後ろに隠れるフレデリカ。


「店の仕事をちゃんとなさい!」

「してるしー」

「アッシュさん、おかえりなさい。ごめんなさいね。うちの娘がつきまとってきて」


 こうなってはもはや雑談はできなくなり、フレデリカはすごすごと受付の前に戻った。

 俺たちも『ブーゲンビリア』を後にした。

 そして、長らく留守にしていた家へと帰ってきた。


「帰ってきましたわね。わたくしたちの家に」

「うむ。ワシらの家に帰ってきたのじゃ」

「はいっ。わたしたちの家ですっ」


 ……。

 なんだ、この違和感だらけの会話は。

 しかも三人とも俺をじっと見ている。

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