表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

458/838

66-2

「スセリさまは不老不死になってまでやりたいことがありますの?」


 そうマリアが尋ねる。

 不老不死になること自体が目的だと俺は思っていたが、彼女はそうは思っていないらしい。


「あるのじゃ」


 スセリはうなずく。


「おぬしらには想像すらできん、大いなる野望がな」


 その言葉にプリシラとマリアが驚く。


「野望!? すっ、すごいです! どんな野望なんですか? 教えてください、スセリさま」

「わたくしたちに教えてくださいまし」

「のじゃじゃじゃじゃ……。こればかりは教えられんのじゃ」


 スセリと俺の目が合う。

 彼女がふっとほくそ笑む。


「アッシュ。おぬしも知りたいじゃろう?」


 ――ワシには野望がある。凡百の徒には成しえぬ野望が。


 以前、スセリはそう言った。

 だが、具体的にどんな野望なのかまでは言わなかった。


「気が変わって教えてくれるのか?」

「まだ『その時』ではないのじゃ」

「スセリさま。もったいぶらないで教えてくださいな」

「『その時』が来たら教えるのじゃ。それまでせいぜい生き延びるのじゃな」


 進む先に小さな光が見えた。

 ついに暗闇に終焉が訪れたのだ。

 かすかな光を求めんと自然と早足になる俺たち。


 距離が縮むにつれ、徐々に光が大きくなる。

 すがりつく闇を振り払うかのように俺たちは駆けだした。

 そしてとうとう暗闇から脱出した。


 そこは森の中にぽっかりとあいた広場だった。

 広場は色とりどりの光にあふれ、まるで祭りのような華やかさだった。

 頭上をあおぐも、森の木々がふたをしている。


 光源は、木になっている木の実だった。

 赤や黄や緑といったいろんな色の木の実が光を発していたのだ。

 俺たちはぽかんと口を開けてその場に立ち尽くしていた。


 広場の奥に家がある。

 レンガでつくられた、木こりが住むような小さな小屋だ。

 屋根から伸びる大きな煙突が印象的。


「まるで別世界だ……」

「きれいですね……」


 小屋の扉が開いた。

 そこから、いかにも知識人といった風貌の白髪の老人が現れて、こちらに歩いてきた。


「ようこそ、客人」


 老人はそう俺たちをもてなした。


「あ、あなたは誰ですか……?」


 意外な質問だったらしい。老人は「はて」と首をかしげた。


「ここに来るということは、私のことも当然知っていると思うのだが」

「もしやおぬし、賢竜ポルックスか?」

「なんだ、知っているのではないか」

「ええーっ!?」


 プリシラがすっとんきょうな声を上げた。

 彼女だけではなく、俺とマリアも目をしばたたかせていた。

 竜といえば、トカゲのような巨躯にコウモリの翼を生やした怪物のはず。

 ところが、俺たちの目の前にいるのはどう見ても年老いた人間だった。


「ポルックス。もしや、魂を移し替えたのか?」

「魔法で人間の姿に変身しているのだよ。研究をするのに最も適した姿が人間だからね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ