65-5
予想どおりの返事だった。
ジオファーグさんに賢竜ポルックスの住処を教えてもらい、俺たちはそこへ行くことになった。
そこは間違いなく、これまで以上に危険な場所だろう。ジオファーグ家の財産目当てにポルックスに会いにいって帰ってきた者は一人としていないのだから。
屋敷の裏口から外に出る。
ジオファーグさんに「紫の道を行け」と言われたときはさっぱり意味がわからなかったが、今になってようやく理解できた。
裏手の森に入ってすぐ、分かれ道があったのだが、その分かれ道の一つだけ、周囲の木々が紫色に染まっていたのだ。
この道を選んでいけばポルックスの住処にたどり着くのだろう。
「ここまでしてやる義理はないと思うがの」
スセリがつぶやく。
ダグとメグのことか、あるいはジオファーグさんのことか。
きっとどちらもだろう。
「義理はありますわよ、スセリさま。わたくしたちは冒険者。人助けをするのが務めですわ」
「それはさっき聞いたのじゃ」
「マリアさまの言うとおりです。人助けは良いことです。助けて、助け合うのが人間なのです」
「プリシラは本当に良い子じゃのう」
嫌味のつもりで言ったのだろうが、プリシラは「てへへ」と照れていた。
賢竜ポルックスの住処への道がわかった俺たちはいったんジオファーグさんの屋敷に戻り、そこで夜を明かすことにした。
俺とプリシラ、スセリ、マリアの四人はそれぞれ好きな部屋を選んでそこで寝た。
富豪の屋敷だけあって華美な内装だが、長年使っていないせいでホコリとクモの巣まみれで台無しだった。
とはいえ、森の中で野営するよりはずっとマシだ。
とりあえずベッドのホコリだけは払って気持ちよく寝られるようにした。
ベッドに腰掛ける。
ふわふわのベッドで寝心地がよさそうだ。
コンコン。
扉がノックされる。
「アッシュさま。お夕飯にいたしましょう」
プリシラに呼ばれて部屋を出た。
屋敷の主が使う食堂はジオファーグさんが儀式の部屋に改造していて使えなかったので、メイドや使用人が使う小さな食事部屋に四人で集まって夕食を食べた。
その夕食も、自分たちが持っていた携帯食料だが。
「台所がきれいなら干し肉を調理できたのですが」
「今夜はこれでがまんですわね」
テーブルを四人で囲んで固い干し肉をかじった。
「のじゃっ!?」
黙々と干し肉を噛んでいたら突然、スセリが俺に抱きついてきた。
のどに詰まりかけた肉をどうにか飲み込む。
「アッシュ! おぬしも見たじゃろう!?」
「な、なにをだ……?」
「幽霊なのじゃ!」
スセリが窓を指さした。
窓に映っているのは夜の闇。目を凝らすと庭のようすがかろうじてわかる。