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64-6

「さあ、ゆくのじゃ」


 魔物を退けた俺たちは森の探索を再開した。

 プリシラの描いた地図を頼りに道を引き返し、分かれ道のところまで戻ると、今度はもう片方の道を選んで進んだ。


 薄暗い、静かな森を歩いていく。

 俺たちの歩いている道は自然にできたものではなく、明らかに人の手によって舗装された道だった。

 この森の住人ジオファーグが道を造らせたのだろう。

 当の本人は姿をくらましているが。


「それにしても、プリシラの描く地図はきれいだな」

「てへへ」


 俺に褒められてはにかむプリシラ。


「実は、こういうときのために地図描きの勉強をしたんです」

「殊勝な心がけじゃのう」

「本を読んで勉強しましたの?」

「いえ、キルステンさまに教えていただいたのです」


 ギルド長のエトガー・キルステンさんが!?

 俺たちは一様に驚いた。

 プリシラが言うに、彼女は最初、ギルドで借りた地図を真似て地図描きの練習を独学でしていた。そこにたまたまキルステンさんが現れて地図描きの指南をしてくれるようになったという。


「顔に似合わず面倒見がよいのじゃな」

「失礼ですわよ、スセリさま」


 俺もスセリと同じことを思っていた。

 あの人は自分から声をかけるような性格には見えないから。

 あの人は本当に意外な性格をしている。

 外見でひとを判断してはいけないな。


「それでわたし、地図描きの勉強をしながらキルステンさまといろいろお話しをしたんです。休日はなにをされているのかとか、普段の暮らしはどんな感じなのかとか」

「へえ、仲良くなれたんだな」

「キルステンさんはとてもやさしくてステキな方ですっ」


 と、そこでプリシラはなにかに気付いたらしく「ハッ」とした表情になってからこう付け加えた。


「でもでもでも、アッシュさまのほうがステキですっ。キルステンさまに恋心は抱いていないのでご安心くださいっ」

「わ、わかった……」


 安心、すべきなのか……。


「じゃが、外見で比べればエトガー・キルステンのほうが圧倒的に男前なのじゃ」

「一匹狼、って感じですわね」

「ちょっ、ちょっとこわいですけどね……」

「そこがよいのじゃよ」

「あら、スセリさまはキルステンさまを好いていますの?」

「いんや。ぜんぜん。ワシは終生、夫を愛しておる」


 スセリが舌なめずりしながら俺に視線を向ける。


「そしてアッシュよ。おぬしはワシの夫の血を引いておる」

「ちょっと! スセリさま!」

「それはいけませんっ」


 マリアとプリシラが視線を阻むように俺の前に立ちはだかった。

 スセリよ。確かに俺はリオンさんの血を引いているが、お前の血も受け継いでいるんだぞ……。

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