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64-5

 皆、目を閉じる。

 俺も目を閉じ、そして魔書『オーレオール』の魔力を借りて魔法を唱えた。


「光放て!」


 その瞬間、まぶたの上からも痛いくらいに感じる閃光がほとばしった。

 目を閉じていてもわかる。太陽を直視したかのような強烈な光を。


「グオオオオッ!」


 ルーンベアの苦しげな叫び声。

 それからどしん、と大きな物体が倒れる音。

 光が収まって目を開けると、閃光を浴びたルーンベアが倒れていた。


 この魔物に魔法は効かない。

 しかし、魔法から発する光までは防げまい。

 目論見どおり、ルーンベアは閃光を目に浴びて気絶した。


「アッシュさまがルーンベアをやっつけましたっ」

「魔法が効かない魔物を魔法で倒すなんて、すごいですわ!」

「やりおるのう、アッシュよ」

「な、なんとなく思いついたのがたまたま成功しただけだから……」


 彼女たちにほめられて照れくさくなった俺は頭をかいた。

 さて、これで終わりではない。

 最後のひと仕事が残っている。


「アッシュよ。ルーンベアにとどめをさすのじゃ」

「殺してしまうんですか?」


 プリシラがそう尋ねてくる。

 線路をふさいでいた牛型の魔物とは違い、ルーンベアは明確に人間に害を及ぼす凶暴な魔物。ここでトドメをささなくては、いずれまた森に迷い込んだ人間を襲うだろう。王都周辺ではルーンベア討伐の部隊が組まれるくらいだ。


「プリシラは後ろを向いててくれ」

「……いえ、わたしも見届けます。アッシュさまのメイドですから」


 俺は気絶したルーンベアに近寄る。

 そして太い首に手を当てて金属召喚の魔法を唱えた。

 手のひらからギロチンのような刃が出現し、その勢いでルーンベアの首をはねた。


「きゃっ」

「ひゃっ」


 プリシラとマリアが小さな悲鳴を上げた。

 さすがに首をはねる瞬間は見られなかったらしく、目をつむって顔を背けていた。

 スセリはこれっぽっちも表情を変えずに見ていたが。


 胴体から分離したルーンベアの頭が地面に転がる。

 これで完全に絶命した。


 それからナイフを使い、ルーンベアの特徴である円形の文様が描かれた胸の毛皮をはいだ。俺は猟師ではないから毛皮をはぐのにだいぶ苦労した。

 これでルーンベアを討伐した証明を手に入れた。

 冒険者ギルドに持ち帰れば俺たちの評価が大きく上がる。

 結構な額の報酬ももらえる。


「ルーンベアの肉は食べられませんの?」

「魔物の肉は人間には毒じゃからのう」

「これが動物のくまさんでしたらお肉も食べられるのですが……」


 人間にとって忌まわしい存在であるため、魔物からとれる素材は買い手がほとんどいない。プリシラの言うとおり、こいつが動物の熊なら肉も毛皮も高値で売れるだろうが。

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