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64-2

 翌日。

 俺たちはダグとミクの父親が入ったという森の情報を町で集めた。


 どうやらその森は危険な場所だと町では有名らしく、情報は次々と手に入った。

 人々はその森を『ジオファーグの森』と呼んでいた。


 その森の奥には豪華な屋敷があり、ジオファーグという富豪が住んでいたからそう名付けられた。

 ジオファーグは爵位を持たない平民だが、並の貴族では敵わないほどの財産を持っていて、多額の税を納めていた。町に駅を建設できたのもジオファーグのおかげだとか。

 領主と懇意にしていたジオファーグは月に何度か町に出て領主と会っていたため、彼の顔を知っている住民は多かった。


「けど、ある日を境にジオファーグは姿を見せなくなった」

「屋敷に行こうとしても、森に迷って辿り着けないらしいですわ」

「行方不明になった人もいるらしいです……」


 おそらくジオファーグは急病かなにかで死んだのだろうとうわさされた。

 彼が姿を見せなくなって以降、その森は不吉な場所として誰も立ち入らなくなった。

 ときどき、ジオファーグの遺産を目当てに森へ入る者がいたが、さんざん森をさまよい歩いて帰ってくるか、行方知れずになるかだった。


「ダグとミクの父親はジオファーグの遺産を手に入れるため、森に入ったのじゃろう」


 兄弟の父親が森へ行ったのを知っている人に会えたものの、彼らはみんな「あきらめたほうがいい」と首を横に振っていた。

 貧困層居住区の人間が一獲千金を狙って森に入るのはこれまでもあったのだ。


「さて、アッシュよ。ジオファーグの森へ入るのか?」

「もちろんだ。ダグとミクと約束したからな」


 じゅうぶんに準備を整えてから俺たちはジオファーグの森へと向かった。


「ダメだ。帰りな」


 だが、森の入り口には領主の兵士がいた。

 入口の両脇に二人、槍を持って立っている。


「領主さまが森への立ち入りを禁じている。さあ、帰った帰った」

「俺たち、冒険者なんです。行方知れずになった人をさがしにきました」

「冒険者……」


 兵士たちが顔を見合わせる。


「冒険者ギルド本部直々の依頼を証明する書状もあります」

「アッシュさま!?」


 プリシラとマリアがぎょっと目をむいた。

 書状はあるにはあるが、それはシヴ山探索を許可するための書状だ。

 どうせ中身までは読むまいと期待して俺は書状を見せたのだった。


「王都のギルド本部からの命令なら――」

「仕方あるまい」


 兵士たちは道を開けてくれた。


「だが、気をつけるのだぞ。道に迷いそうになったらすぐに引き返すんだ」

「わかりました。お気づかいありがとうございます」


 そうして俺たちはジオファーグの森へと踏み入ったのだった。


「アッシュよ。おぬし、やるのう」


 スセリがニヤリとする。


「ワシはこういうやりかた、好きじゃぞ」

「わ、わたしはウソがバレないかとハラハラドキドキでした……」

「ウソは本来よくありませんけれど、時と場合によりますわよね」

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