62-7
「切符を拝見いたします」
車掌が俺たちの席にやってきてそう言う。
なにかいけないことをしてしまったのだろうか。
不安になりながら、言われたとおり切符を出す。
すると車掌ははさみのような道具で切符の端を切った。
「ありがとうございます。よい旅を」
俺たち全員の切符を切ると車掌は別の席に行き、その乗客の切符も切った。
スセリが言うに、列車に乗ったらこうやって切符を切るらしい。
それからしばらく静かな時間が続いた。
スセリは所有物を鑑賞するかのような目で俺をじろじろ見ている……。
マリアは本を読んでいる。
プリシラは窓の外を飽きずに眺めている。
「プリシラ。俺と席を交換しないか?」
「えっ」
「窓際のほうが景色を見やすいだろ」
というわけで、俺とプリシラは席を交換した。
俺が通路側の席になり、プリシラは窓際の席。
「これならマリアとも正面になるから公平だろ?」
「まあ、アッシュったら。おやさしいのね」
「ちょっ、ちょっと待つのじゃ!」
スセリが慌てだす。
「それではワシがアッシュと見つめ合えんじゃろ。どこが公平なのじゃ」
「そ、そんなに俺と見つめ合いたいのか……」
「自分の血を受け継いだ子孫を感慨深く見つめておるのじゃよ。種から育てた花には愛着がわくものじゃろ?」
だから俺をじろじろ見ていたのか……。
「悪いがここはプリシラとマリアに譲ってやってくれ」
「そんな不公平は許さんのじゃ。アッシュのひざに座ってやるのじゃ」
スセリが俺のひざの上に乗る。
「これが真の公平というものなのじゃ」
彼女は満足げだった。
「両手に花どころではないのう。よい身分じゃな、アッシュ」
「ひざから降りてくれないか……」
5、6歳の子供ならともかく、12歳くらいの身体のスセリをひざの上に乗せては負担がかかる。
「スセリさま。みっともないですから自分の席に座ってくださいまし」
「ならばマリア。ワシと席を交換するのじゃ」
「お断りいたしますわ」
「プリシラ」
「こ、こればかりはスセリさまのご命令といえど……」
それでふてくされたスセリは、窓枠にひじをついて窓のほうをぷいと向いてしまった。
「アッシュはワシよりもプリシラとマリアが好きだとよーくわかったのじゃ」
やけ気味にサンドイッチを食らう。
「そんなに俺といっしょにいたいのか?」
「いかんのか?」
尋ね返されてしまった。
そこでふと疑問に思った。
スセリにとって俺はどういう存在なのだろう。
自分の後継者?
大事な家族?
恋愛対象?
それともただの道具扱い?
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