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62-4

 スセリの提案は当然却下となった。

 今ここで考えてもいい名前は思い浮かばないだろうから、この家の名前は冒険の道中でじっくり考えることにした。

 なにせ、今回の冒険はじゅうぶんに考える時間があるから。



 翌日。

 俺たちは大陸北部のシヴ山へと向かうため、とある場所へとやってきた。

 その場所とは、


「駅ですっ」


 王都外周にある鉄道の駅だった。

 俺とプリシラ、スセリ、マリアは駅の入り口にいた。

 大勢の人々が駅を出入りしている。


 王都周辺の地域には鉄道が敷かれているのだ。

 鉄道とは、引かれたレールの上を走る大型の乗り物。

 俺たちは鉄道を使いシヴ山へと向かうのである。


「ついに鉄道に乗るんですね。わたし、ワクワクドキドキしてきました」

「わたくし、鉄道に乗るのは初めてですわ」

「俺もだ」

「田舎者たちじゃのう。鉄道なんぞではしゃぎおって」


 駅の中へと入る。


「えっと、鉄道を利用するためには切符というものを買う必要があるんですよね」

「ああ。四人分な」

「わたし、切符を買ってきます。メイドの威信にかけて!」


 そ、そこまで張り切らなくてもいいぞプリシラ……。

 プリシラは小走りで切符売り場に向かい「切符くださいっ」とよく通る声で言った。

 切符を買い、プラットホームへと行く。


「お、大きいですわ……」


 プラットホームにはすでに列車が停まっていた。

 黒光りする、鉄の列車。

 六両の客車が連なっている。

 線路を走っている姿を遠くから見たことしかなかったから、その迫力に俺もプリシラもマリアも圧倒されていた。


 シリウス号。

 側面につけられた鉄のプレートにこの列車の名前が書かれていた。

 俺たちは今からこれに乗り、シヴ山へと行く。


「こんな大きな列車、どうやって走るんですか? 馬車みたいに馬で引くわけではありませんし」

「蒸気の力なのじゃ。熱で生じた蒸気で機関を動かし、車輪を回すのじゃよ」

「魔法を使っているわけではありませんのね」

「魔法だと、個人の資質や体調に依存するからの」


 懐中時計に目をやる。

 発車の時刻まで少し時間がある。


「おっ、アッシュよ。弁当が売られておるぞ。買うのじゃ」

「弁当ならプリシラとマリアが作ってくれただろ」

「よいではないか。列車に乗りながら駅の弁当を食べるのも鉄道の醍醐味なのじゃよ」

「アッシュさま。わたし、駅のお弁当を食べてみたいです」

「わたくしも興味がありますわ」

「わかった。実は俺もちょっと気になってたんだ」


 プラットホームに備えられた弁当売り場で四人分の弁当を買う。

 それとほぼ同時に列車の扉が開き、中に入れるようになった。

 散らばっていた人々がぞろぞろと列車の中に吸い込まれていく。

 俺たちもその流れに混じってシリウス号に乗車した。

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