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62-3

 もしかしてスセリ、子供が好きなのだろうか。


「スセリ、案外面倒見がいいよな」

「ワシが子を産んで育てた経験があるのを忘れたのか? 母性くらい残っておるわ」


 俺がスセリの子孫だから当然そうなるわけだが、想像できない。

 この自由奔放な少女が自分の子を産み、育てただなんて。

 それでも彼女はかつて『スセリお母さん』であり『スセリおばあちゃん』でもあったわけだ。


 そこで俺はふとした疑問を口にする。


「スセリの夫はリオンさんって人なんだよな」

「うむ。ワシの幼馴染じゃった」

「どういうきっかけで二人は恋仲になったんだ?」

「色仕掛けじゃ」

「真面目に答えろ」

「わからんのか。仲の良い男女が年月を経ていけば自然と恋愛に発展するのじゃ」


 スセリらしからぬ、普通の答えだった。


「確か、スセリとセヴリーヌはリオンさんを取り合っていた恋敵だったんだよな」

「まあ、最終的にはワシのものになったがの」

「どうしてリオンさんはスセリを選んだんだ?」

「かんたんじゃ。セヴリーヌが大人になるのを拒絶したからじゃ。歳をとることを選んで大人になったワシとリオンは結婚し、子を産んで育てた。セヴリーヌはワシがリオンを奪ったと思っておるが、実際のところリオンが抱いておったセヴリーヌへの情は異性への恋愛ではなく、幼い子供に対する愛情だったわけなのじゃ」


 セヴリーヌは時間凍結の魔法により、老いることがなくなった。

 しかし、その代償として身体と心の成長が子供のまま止まってしまった。


「おぬしはあやつに恋愛感情を抱いておるか?」


 俺は首を横に振る。

 セヴリーヌとは仲が良い。文通を続けるくらい。

 しかし、俺にとって彼女は恋愛対象ではなく、あくまで妹のような存在である。


「哀れじゃの。セヴリーヌは昔も今も『あの頃』のままなのじゃ」


 そんな話をしながら家に帰ってきた。

 夕食の時間までまだ時間があるため、俺たちは各々自由行動をとることにした。

 といっても、全員リビングでくつろいでいるが。


「ねえ、アッシュ。この家に名前はありますの?」


 マリアが尋ねてくる。


「おうちに名前があるのですか?」

「そうですわよ、プリシラ。家にはふつう、名前があるのですわ」


 貴族が住むようなある程度大きな屋敷には名前をつけるのが一般的だ。俺の実家の屋敷にもリゲル荘という名前がついている。

 この家にも名前があるのだろうか。小さな家だからないかもしれない。

 キルステンさんなら知っていそうだが。


「名前、つけましょうっ」

「おしゃれな名前がいいですわね」


 プリシラとマリアの視線が同時に俺に向けられる。

 期待のまなざしだ……。


「いや、いきなり言われても思いつかないぞ」

「思いついたのじゃ。『スセリ荘』で決定なのじゃ。のじゃじゃじゃじゃっ」


 端末でゲームをしていたスセリが顔を上げてそう言った。

 ふざけているだけだろうが、自分の名前を付けるとか恥ずかしくないか……?

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