61-7
休日、約束通り俺はいつものカフェでフレデリカにケーキをおごった。
それとプリシラにも。
――アッシュさまがキスしないか見張らせていただいますッ。
という理由で彼女は俺たちについてきたのだった。
「おいしいねー、プリシラー」
「しあわせですー」
俺たちはレアチーズケーキを食べていた。
サクサクのクッキー生地と、その上に乗っかった、やわらかく甘酸っぱいレアチーズ。この店で一番人気の商品だけあって絶品だった。
……そして、なかなかの『お値打ち価格』でもあった。
「アッシュさーん、私になにか言うことあるんじゃないですかー?」
唐突にフレデリカがそう言ってくる。
彼女に言うこと……?
全く心当たりがないのだが……。
俺が戸惑っていると、フレデリカは不機嫌そうに口をすぼめた。
「気づきませんかねー」
「え、えっと……」
「アッシュさま。フレデリカさまをよくご覧になってください」
プリシラは彼女の意図を理解しているらしい。
俺はフレデリカをまじまじと見る。
髪型はいつもどおり。
服も特に変わりはない。
あとは――。
「そっ、そのネックレス、似合ってるぞ……」
俺はおそるおそるそう言った。
フレデリカは俺をにらみながら黙りこくっている。
苦しい沈黙。
そしてしばらくした後、彼女はため息をついた。
「まあ、あてずっぽうでしょうけどー、合格にしてあげますー」
彼女の身に着けているネックレスは、試験で好成績を出せたごほうびに両親に買ってもらったものだと明かしてくれた。
どうやら彼女はこれに気づいてほしかったようだ。
「男の子は女の子の些細な違いに気づかなきゃダメですよー。わかりましたー?」
「肝に銘じておく……」
俺は胸をなでおろした。
「ここにいたのか」
そのときだった。俺たちの席に一人の男性がやってきたのは。
「えっ、キルステンさん!?」
まさかのギルド長、エトガー・キルステンさんだった。
どうしてこの人がここに……。『ここにいたのか』ということは、俺たちをさがしていたのか。
キルステンさんは俺たち三人を順番に見る。
「男子が女子二人とお茶を飲むのは少々不健全ではないか」
と彼は眉をひそめた。
「それはともかく、アッシュ・ランフォード、ならびにプリシラ。今すぐ私と共に冒険者ギルドへ来い」
「お仕事ですか? キルステンさま」
「火急の要件だ」
「お休みの日もお仕事なんて、冒険者って大変ですねー」
「すまないフレデリカ。今日は――」
「はーい。今日のお茶はこれくらいにしておきまーす。またおごってくださいねー」
フレデリカと別れた俺とプリシラはキルステンさんの後をついて冒険者ギルドへ向かった。
その途中、
「アッシュ・ランフォード。お前はいつも異性を複数はべらせているが、そういうのは感心しないな」
「えっと、キルステンさん……。急いでいるんでしたよね……?」
「そうだったな。この話の続きはおいおいするとしよう」
するんだ……。
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