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61-4

「それだけわかればじゅうぶんだ。地道にいこう」


 これまでは順調に進んできたのだが、応用問題や文章問題に挑戦しだした途端、フレデリカの歩みが急に遅くなってしまった。

 それでも彼女は必死にもがいて勉強を続けている。


「で、できましたぁ……。合ってますー?」

「……間違ってる」

「ですよねー」


 フレデリカは大きなため息をついて机に突っ伏す。


「忘れてましたが思い出しましたよー。私、おバカだったんだーって」

「気分転換にカフェでも行くか?」

「いえ、もうちょっとがんばりますー」


 フレデリカががんばるのには理由があった。

 学校の中間試験が間近なのだ。

 彼女はこれまでの勉強の成果を見せてやろうと張り切っている。

 試験の成績が良ければ好きなものを買ってもらうと親とも約束したらしい。


 陽が沈んで夜。

 家庭教師の時間が終わった。

 フレデリカと彼女の両親に見送られて家を出る。


「アッシュさーん。私のこと、見捨てないでくださいねー」


 フレデリカは俺が曲がり角を曲がるまで手を振ってくれていた。



 それから10日経った。


「――さま。アッシュさま?」

「えっ?」


 ソファに座っていると、突然目の前にプリシラが現れた。

 突然、というか、俺がぼんやりしていただけだったが。


「ど、どうした?」

「今日のお夕飯、なにか食べたいものはありますか?」

「プリシラの料理はなんでもおいしいからな……」

「てへへ」


 くすぐったそうにするプリシラ。


「ですがアッシュさま。それでは困ります」

「そうだな……。しいて言うなら魚が食べたいな」

「魚ですね。承知しましたっ」


 とてとてと台所に行くと、編みカゴを手にして戻ってきた。


「買い物に行くなら俺も付き合うよ」

「本当ですかっ? ぜひぜひお願いしますっ」


 そういうわけで俺とプリシラは夕食の食材を買いに市場へと向かった。

 市場は夕食の買い物をする客たちでごった返している。

 俺とプリシラは人と人の隙間を縫うようにして歩く。

 はぐれないように手をつないで。


 魚を売っている露店にどうにかたどり着く。


「そのお魚くださいっ」

「はいよっ」


 どうにか魚を買えた。

 それから他の食材もそろえた俺たちは、すぐさま市場を後にした。

 帰路。

 俺の隣を歩くプリシラはごきげんの笑顔だった。


「アッシュさまとこうして二人きりになるの、久しぶりです」

「えっ。そうだったか?」

「だって、最近はずーっとフレデリカさまのところに行っていたではありませんか」


 笑顔から一転、拗ねた表情になる。


「わたしもマリアさまもスセリさまも、さみしい思いをしているのですよ。わかってらっしゃいますか? アッシュさま」

「す、すまない……」

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