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61-3

 それから毎日、俺はフレデリカの家に通って勉強を教えた。

 最初はうんうんうなりながら苦しそうに頭を抱えていた彼女であったが、日が経つにつれて少しずつ問題が解けるようになってきた。そうなると彼女も問題を解くのが楽しくなってきたのか、


「さーさーアッシュさん。勉強しましょうー」


 と催促してくるまでになって驚かされた。

 そして今日も彼女は机に向かって勉強に励んでいた。


「私ー、もしかして天才になっちゃいましたー?」


 俺の作った小テストで満点を取ったフレデリカが自慢げに言った。

 これは基礎中の基礎なので、満点を取るのがこれから先へ進む大前提。

 ――と言いたいところを抑えて、俺はあえて彼女を褒めた。


「すごいな。驚いたよ」

「でしょー」


 えっへん、と胸を張るフレデリカ。


「というわけでー、約束のキスをしてくださーい」

「そんな約束したおぼえないぞ」

「あれー? そうでしたっけー」


 基礎は完璧になった。

 今日は応用問題に挑戦させよう。

 俺は教科書を先に進め、文章問題を彼女に解くよう促した。


「……あれ? あれれー?」

「よく問題を読むんだ。基礎ができていればちゃんと解ける問題だから」


 案の定、フレデリカは最初の問題で足止めをくらっていた。

 苦しそうな顔をしている。

 ノートに式を書いては消しゴムで消している。


 俺は彼女の奮戦するようすを黙って見守っていた。

 彼女が助けを求めるまで待っていよう。

 一人で戦うのも勉強だ。


 教科書とにらめっこしているフレデリカはときおり俺の顔に目をやるが、なにも言わず再び教科書を見る。

 俺は心の中で「がんばれ」と応援していた。


「できたー!」


 とフレデリカが言ったのが、いつもの勉強が終わるちょうどの時刻だった。

 結局、今日はこの一問にすべてを費やしてしまった。


「ど、どうですー? アッシュさーん」


 自信なさげにノートを見せてくる。

 ペンと消しゴムあとまみれのフレデリカのノートからは、問題との激戦がありありと伝わってきた。

 俺はノートをしばらく読んだ後、それを彼女に返した。

 どきどきした面持ちのフレデリカ。


「……残念だが、間違ってる」


 俺がそう言うと、彼女はがくっと落胆した。


「でも、がんばったな」

「めちゃくちゃがんばりましたよー。それなのにアッシュさんはひどいですー」

「し、しかたないだろ……。間違いは間違いなんだから」


 それから俺は問題の解説を彼女にした。

 彼女は真剣な顔で幾度もうなずきながら俺の解説を聞いていた。


「――というわけなんだが、わかったか?」

「半分の半分の半分くらいですかねー」

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