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65-6

「アッシュさんは学校の成績どうだったんですかー?」

「自慢するわけじゃないが、常に上位だったぞ」

「自慢ですよそれー」


 平日は学校に通い、他の生徒たちと勉強。休日は家庭教師とみっちり勉強。

 思い返せば勉強ばかりだったな。

 ランフォード家は田舎の町にあったから、上流階級の子供だけが通える学校というものはなく、町の子供たちと一緒に勉強した。


 俺には王都から招いた専属の家庭教師がいたから、町の子供たちとは根本的に勉強の質が違った。だから試験で好成績を取れたのも当たり前だった。

 ランフォード家で唯一召喚獣を召喚できなかったから、その分学業で認めてもらおうとがんばっていたというのもある。


「じゃあ、アッシュさん。この問題解けますかー?」


 フレデリカがカバンから教科書を出してテーブルの上に開く。

 数学の教科書だ。

 フレデリカは問題の一つを指さす。


「解けるぞ」


 嫌味に聞こえそうだったから言わなかったが、こんな初歩の初歩、大したことない。

 俺はペンを借りてノートに答えの式を書いてみせた。

 ノートをフレデリカのほうに向ける。

 フレデリカはあんぐりと口を開けて目をしばたたかせていた。


「どうだ? 合ってるか?」

「私、おバカさんなんで、合ってるかどうかわかんないですー。でもたぶん合ってると思いますよー」


 この問題が解けないとなるとフレデリカ、授業についていけてないな……。


「フレデリカ。提案があるんだが」

「提案ですかー?」

「俺に勉強を教わらないか?」

「ふえっ!?」


 驚くフレデリカ。


「これから毎日、学校から帰ってきたら俺が勉強を教えるよ」


 そう提案するも、彼女は渋い紅茶を飲んだときの顔をしている。


「知ってますー? 私ー、勉強嫌いなんですよー」

「なら、なおさら克服しないとダメだろ」

「あー、あー、聞こえませーん。なんにも聞こえませーん」


 両耳をふさがれてしまった……。

 俺はフレデリカの手首をつかんでやさしく耳から引きはがす。


「俺がやさしく教えるから」

「そんなこと言って、実は私と二人きりになりたいんでしょー?」

「それはない」


 あえて真顔で否定する。

 フレデリカがむすっとする。


「……なんか、それはそれで腹が立つんですけどー」

「とにかく、俺といっしょに勉強しよう。勉強がわかれば学校がもっと楽しくなるぞ」

「うーん」


 天井を見つめながら悩むフレデリカ。

 しばらくそうした後、彼女は俺のほうを向いて言った。


「わかりましたー。アッシュさんを家庭教師に雇いますー」


 それから小悪魔っぽい笑みを浮かべてくちびるに指を添える。


「報酬は私のキスでー」

「キスでいいのか?」

「冗談ですよー。ホンキにしましたー?」

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