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60-5

「それではみなさん、またいつかお会いしましょう」


 受勲から数日後、フーガさんが王都グレイスを発つ日になった。


「すみません、フーガさん。杖を壊してしまって」


 彼が持ってきた魔杖ガーデットは悪魔ベズエルに破壊されてしまった。

 生命力を奪うという強力な力を秘めた道具。貴重だったものに違いない。

 しかしフーガさんは「気にしないでください」と言った。


「魔杖ガーデットを壊されたのはアッシュさんの責任ではありません。それどころか僕はアッシュさんに感謝しなければなりません。アッシュさんが身をていして僕を助けてくれなければ、ガーデットもろともベズエルにやられてしまったのですから」


 フーガさんは自嘲してこう続ける。


「みなさんを助けるために呼ばれたのに、結局僕はなんの役にも立ちませんでしたね。不甲斐ないです」

「そんなことありません。遠くから助けにきていただいて、とても感謝しています」

「そう言っていただけてうれしいです。アッシュさん」

「今度はゆっくりお茶を楽しみましょう」

「ですね」


 そしてフーガさんを乗せた馬車は俺たちの前から走り去った。



「へー。すごい冒険をしてきたんですねー」


 あくる日、宿屋の娘フレデリカに冒険の話をした。

 フレデリカは俺に会うたび、冒険の話をせがんでくるのだ。

 今回もフレデリカは興奮した面持ちで俺の話を聞いていたのだった。


「しかも王さまから勲章までもらえるなんて。これはもう英雄アッシュ誕生ですねー」

「俺はそんなんじゃないさ」


 俺とフレデリカがいるのはいつものカフェ。

 だいたいいつもここで彼女とおしゃべりするのだ。お茶とお菓子を楽しみながら。


「ラピス王女を暗殺者から助けた――って、新聞にも書いてありましたよー」


 魔王ロッシュローブの力がこの世界に残っていることが知られたら、人々に無用な不安を与えかねない。だから世間には四魔については伏せ、表向きにはラピス王女の命を救った褒賞として勲章を授与されたことになっているのだ。


「フレデリカ、新聞読むのか」

「私が新聞読むのがそんなに意外ですかー?」


 ぎろりとにらまれてしまった。


「私だって新聞くらい読みますよー。社会の情勢……? とか、いろいろとしっかりと知っておかなくちゃいけませんからねー」


 失礼ながら彼女には遊ぶのが好きで学業をおろそかにしている印象を抱いていた。

 フレデリカが真面目な顔をして新聞を読む姿……。想像できない。


「学校の成績も実はよかったりするのか」

「それはもちろん」


 胸を張ったフレデリカはこう言った。


「下から数えたほうが早いですよー」


 ……やっぱり。

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