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60-1

 悪魔ベズエルを封じる鎖は残り二本。

 俺は頭の中で思い描く。剣のかたちを。


「来たれ!」


 金属召喚で呼び出した剣を握り、振りかぶり、渾身の力を込めて刀身を悪魔ベズエルに叩きつける。

 だが、硬質の肌にぶつかった瞬間、刃はもろくも折れてしまった。

 なんて硬さだ。


「下がるのじゃ!」


 俺が飛び退くと、スセリが魔法を唱える。

 彼女の手から放たれた魔法の矢は悪魔ベズエルの胴体に命中したが、やはり硬質の肌によって跳ね返されてしまった。


 攻撃が一切通用しない。

 破片とはいえ、魔王に挑むのは無謀だというのか。


 悪魔ベズエルが残りの鎖をすべてちぎる。 

 これにより、この黒き悪魔は完全に自由を得た。


 逃げるか?

 いや、ここで諦めたらこの悪魔が外の世界に出てしまう。そうなれば大惨事はまぬがれない。

 どうにかしてここで食い止めなくては。


 弱点。どこかに弱点があるはず。

 俺は「冷静になれ」と頭の中でつぶやきながら対峙するベズエルを観察する。

 この悪魔のもろい部分……。

 硬質の黒い皮膚。その中で唯一、皮膚に覆われていない部分……。


「……スセリ。少しでいいから、ベズエルの動きを止められないか?」

「勝機を見つけたのじゃな」

「俺が合図したら頼む」

「まかせるのじゃ」


 悪魔ベズエルが吠える。

 おぞましき咆哮。

 鼓膜が震える。


「今一度、縛られるがよい!」


 スセリが魔法を唱えると、悪魔ベズエルの足元から無数の光の帯が出現し、ベズエルの身体に巻きついて拘束した。

 ベズエルが動きを止めた。

 今だ!


「来たれ!」


 再び金属召喚を唱え、槍を呼び出す。

 槍を脇にはさんでしっかりと固定し、悪魔ベズエルに向かって突き進む。

 そして奴の――眼球にその先端を突き刺した。


 手ごたえがあった。

 金属の槍はベズエルのやわらかい眼球を破壊し、内部に食い込んだ。

 苦悶の声を上げるベズエル。


「プリシラ! 力を貸してくれ!」

「まかせてください!」


 この中で一番の力持ちであろうプリシラが加わり、二人で槍を押した。

 槍はさらに食い込み、眼球を完全に貫いて頭部へと達した。


 大きくのけぞるベズエル。

 仰向けに倒れたベズエルは苦しげにのたうち回る。

 頭部の半ばまで刃が達したはずなのに、まだ生きてるなんて……。


「雷よ!」


 スセリが魔法を唱える。

 彼女の手から離れた電撃が槍に直撃し、そこからベズエルの全身に雷が駆け巡った。

 体内から感電したベズエルは、ついに動きを止めた。


 本物の彫像のように動かなくなった。

 もがき苦しむ悪魔――と題名がつけられそうな作品に見えた。

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