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59-4

「ゲームに夢中になってしばらくしてからふとテーブルを見ると……」


 スセリがそこでいったん言葉を切る。

 真剣な表情のスセリ。

 プリシラ、マリア、フーガさんは彼女の雰囲気に呑まれて緊張した面持ちになっている。


 少し溜めた後、スセリは目をかっと見開き、いきなり早口でこう叫んだ。


「皿にあったはずのビスケットが一つ残らずなくなっておったのじゃー!」

「きゃーっ!」


 プリシラとマリアが悲鳴を上げた。

 一方、俺は白けていた。

 フーガさんはぽかんと口を開けている。


「ゲームをしながらついついビスケットを全部食べてしまっておったのじゃ。食欲とは怖いのじゃ」

「それは怖いですね……」

「よくわかりますわ。一枚、もう一枚、あと一枚だけ――と食べてしまいますわよね」


 うんうんとうなずくプリシラとマリア。

 どうやら二人は共感したらしい。


「わたくし、実は最近、お菓子の食べ過ぎで太ってしまいましたの」


 マリアが落ち込んだようすで自分の腹をさする。


「この服も腰や胸元がきつくなってしまって……」

「む、胸ですか……」


 プリシラは自分の平たい胸をぺたぺたとさわりながらマリアの胸と見比べていた。


「えっと、今のって怖い話なんですか?」


 挙手してそう言うフーガさん。


「怖いですよっ」

「とても怖ろしい話でしたわっ」

「そ、そうなんですか……。あはは……」


 女子二人に詰め寄られるフーガさん。

 ちなみにだが、俺もちっとも寒くなっていない。


「さて、これで少しは身体も冷えたじゃろう。先へ進むのじゃ」


 身体は全然冷えなかったが、休憩はできたので多少体力は回復した。

 再び熱砂の大地を歩きだす俺たち。

 うだるような暑さの中、黙々と歩き、ようやく目的地にたどり着いた。


 それは石で組まれた古めかしい建造物だった。

 石造りの建物は小規模で、地下へと続く階段があるだけ。

 おそらく、この先に悪魔ベズエルが封印されているのだろう。

 建物の両端に悪魔の石像が立っていることから推測できた。


 俺が先頭に立ち、光源の魔法で小さな光の球を浮遊させてランタン代わりにし、地下へと続く階段へと足を踏み入れた。


「涼しいですねー」

「助かりましたね」


 階段を下りて、狭い通路を進む俺たち。

 地下通路は外とはうって変わってとても涼しい。

 真っ暗で怖ろしげな場所だが、外よりはずっとマシだった。


 前方の床を小さななにかが素早く横切る。


「ひゃっ!」


 プリシラが俺にしがみつく。


「今のはトカゲですね」


 フーガさんがメガネの位置を直しながら言う。

 トカゲは組まれた石と石の狭い隙間に入っていき、もういない。


「し、失礼しました、アッシュさま……」


 プリシラが照れ笑いを浮かべた。

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