58-7
「僕はアッシュさんたちを信じています」
そう言ってフーガさんも空間の裂け目に入っていった。
あとは俺だけか。
「アッシュ・ランフォード」
魔法円の外側からキルステンさんが俺の名を呼ぶ。
「頼んだぞ」
俺は首肯し、裂け目へと足を踏み入れた。
裂け目の向こうは悪魔ベズエルが封印された異世界だった。
「全員そろって――いない!?」
俺のまわりにいるのはプリシラ、マリア、フーガさんの三人だけ。
あと一人――スセリがどこにもいない。
「スセリさま、先に行かれたのでしょうか」
「別の場所に出てしまったのかもしれませんわ」
「とにかく、まずはスセリをさがそう」
とはいえ、どこにいるのだろう。
周囲は見渡す限り砂漠だ。
延々と砂の大地が広がる渇いた世界。
照りつける強い日差し。
暑い。
猛烈に暑い。
「この世界のどこかにベズエルがいるんですね」
今のところ、それらしき姿は見当たらない。
「あれを見てください!」
プリシラが指さした先に注目する俺たち。
目を凝らすと、遠くの方に木が生えているのがわかった。
「泉がありますっ」
「えっ、そうですの?」
「水のにおいがします」
「水のにおいがわかるなんて、すごいですねプリシラさん」
「わたしは半獣ですので」
きっとスセリはあの泉にいるのだろう。
俺たちは泉を目指して歩を進めた。
「あ、暑いですわ……」
ぜえぜえ息をしているマリア。
額には汗の粒がいくつも浮かんでいる。
フーガさんもしきりにハンカチで汗をぬぐっている。
プリシラもつらいのをがまんしている。
そして俺も暑さにかなりまいっていた。
頭がふらふらする……。
こんなありさまで悪魔ベズエルに遭遇したらおしまいだ。
早いところ泉に行かないと。
水を求めて歩き続けるも、その足取りは決して早くはない。
やわらかい砂に足を取られてうまく歩けないし、砂自体が熱を持っていて靴を熱くする。
ときおり熱風が吹き、砂の粒が顔を打ってくる。
過酷だ。
「ここで休憩しよう」
大きな岩を見つけた俺たちは、その陰に入って腰を下ろした。
涼しい。
日差しから隠れられただけでかなり楽になった。
「みなさん、紅茶をどうぞ」
プリシラが差し出した水筒の紅茶を俺たちは分け合った。
渋くてぬるいが、今は水分を補給できるだけでありがたい。
「くたくたですわ……」
みんな、ぐったりとしている。
岩に背を預けると、思いのほか岩が冷たくて気持ちいい。
「スセリさま、そのへんで干からびているのではありませんの?」
「ベズエルに食べられちゃったのかもしれません!」
「あいつに限ってそれはないだろ」
何故かスセリに関しては楽観視できた。
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