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温厚そうなメガネの青年――フーガさんが冒険者ギルドに訪れたのはそれから二日後だった。
場所は冒険者ギルドのギルド長室。
「みなさん、お久しぶりです!」
満面の笑みのフーガさんと握手を交わす。
「お元気そうでなによりです」
「フーガさんも」
「こうやってまた会えるなんて、なにかの縁でしょうね」
だが、その縁とやらは歓迎できるものではなかった。
俺たちがオストヴィント邸で発見した水晶玉。
その中には邪悪なる存在である四魔ベズエルが封じられていた。
四魔の一体、悪魔ベズエルを倒すにはフーガさんの助力が必須。
フーガさんは俺たちの助けを求める声に快く応じて駆けつけてくれたのだった。
生命力を奪い取る魔杖ガーデットを携えて。
「フーガどの。長旅で疲れているだろうが、さっそく本題に入らせていただきたい」
ギルド長、エトガー・キルステンさんがそう言う。
真剣な顔でうなずくフーガさん。
「我々冒険者ギルドは悪魔ベズエルが封じられた水晶玉を手に入れた。この危険な存在を倒すため、貴公の力を借りたい」
「そのために僕は来ました」
キルステンさんに連れられて、俺とプリシラとマリア、スセリ、それとフーガさんは王都郊外にある礼拝堂のような場所にやってきた。
礼拝堂の中に入ると、床に大きな魔法円が描かれていた。
その内側に入るよう、キルステンさんに促される。
「ここで水晶玉の内側の世界に入り、ベズエルを討伐する」
「あの、この床に描かれている紋様は……」
「結界の魔法円なのじゃ」
スセリが答える。
「万が一、ベズエルがこちらの世界に出てきたとしても、結界を発動させて内側に封じることができる。もっとも、多少の時間稼ぎにしかならんだろうが」
「あら、わたくしたちがベズエルの討伐に失敗すると思っていらっしゃるの? キルステンさまは」
「私は常に最悪の事態を想定して動いている」
魔法円の中心に台座がある。
キルステンさんはそこに水晶玉を置くと、魔法円の外側に出た。
「はじめろ」
スセリが魔法を唱える。
すると、水晶の前に時空の裂け目が生じた。
水晶の内側の世界へと続く入口だ。
「さて、行くのじゃ」
大胆にもスセリは裂け目に向かって飛び込んでいった。
裂け目の向こうに消えるスセリ。
あ然とする俺たち。
横に目をやると、プリシラが緊張した面持ちをしている。
「プリシラ。ここで待っているか?」
「い、いえ、わたしも共に戦いますっ」
マリアがプリシラの手を握る。
「わたくしといっしょに行きましょう」
「はいっ」
プリシラとマリアは手をつなぎ、二人で裂け目の中に入っていった。
残りは俺とフーガさん。