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58-2

 というわけで、パーティーに出席するのは俺とプリシラ――にはならなかった。


「さて、どうやってアッシュのパートナーを決めましょう」

「え? マリア、プリシラに譲るんじゃないのか?」

「そんなこと一言も言ってませんわよ」


 マリアもスセリも譲る気はなく、なんとしてもパーティーに出るつもりらしい。

 好戦的な笑みを浮かべているマリアとスセリ。

 それに負けじとプリシラも「アッシュさまは渡しませんっ」と気合が入っている。


「アッシュ。わたくしを選びますわよね?」


 詰め寄ってくるマリア。

 背筋を伸ばし、視線を合わせてにらみつけてくる。

 その目は俺に首を横に振るのを許していなかった。


「むろん、ワシを選ぶのじゃな? うむ、決まりじゃな」

「アッシュさまはまだなにを言ってませんよ!?」

「さわがしい連中だ」


 キルステンさんが呆れたようすでイスに座る。


「痴話げんかなら外でやれ」


 いったんロビーに出て、それから彼女たちの戦いは再開した。


「あの、誰をパートナーにするかはアッシュさまに決めてもらってはどうでしょう」

「それはダメですわ」


 プリシラの提案をマリアが拒否する。


「だって、そうしたらアッシュ、間違いなくプリシラを選びますもの……」


 マリアは切なげな表情でそう言った。

 確かに、このままらちが明かなかったら俺はプリシラを選ぶつもりだった。


「プリシラはいじらしくてかわいいからのう」

「て、てへへ……」


 照れくさそうにはにかむプリシラ。


「じゃあ、出席するのは俺とプリシラでいいな?」

「よくありませんわっ!」

「よくないのじゃ」


 マリアとスセリが同時に言った。

 なぜだ……。


「ここは公平に決めるのじゃ。『コレ』での」


 スセリがスカートのポケットから出したのは、手のひらに収まる小さな立方体だった。

 立方体の各面にはそれぞれ1から6までの数字が刻印されている。

 ありふれたダイスだ。

 どうやらダイスを振って一番大きい目を出した者を俺のパートナーにするつもりらしい。

 以前、俺をめぐってセヴリーヌの家でボードゲームをした思い出がよみがえる。


「ワシから振るのじゃ」

「お待ちになって、スセリさま」

「なんじゃ」

「『1が出たから1番』というのはナシですわよ」

「わかっておるのじゃ。最も大きな数字を出した者が勝者なのじゃ――ていっ」


 スセリがテーブルにダイスを投げる。

 出た目は――まさかの、いや、あたりまえの6。

 ほくそ笑むスセリ。


「早くも決着がついたのじゃ」

「スセリさま、魔法でインチキしましたわね!」

「ほう、ならば当然、魔力を感じたのじゃな? どうじゃ?」

「そ、それは……」


 くやしげに口ごもるマリア。

 俺もスセリがズルをしないか気をつけていたが、魔力は感じなかった。

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