57-7
スセリが調べたところ、悪魔ベズエルが封じられたこの水晶玉もアズキエルのときと同じく、中に異世界が存在しているらしい。
となると今回もその異世界に入り、悪魔ベズエルを倒すことになる。
賢人の子孫フーガさんと、彼が持つ生命力吸収の魔杖ガーデットの力を借りて。
キルステンさんはフーガさんに助力を頼む旨の書状を彼がいるベルクス地方の魔法研究所に送ってくれるという。
返事が来るまで7日くらいかかるだろう。
本格的にベズエル退治がはじまるのはもうしばらくかかりそうだ。
「ときにアッシュ・ランフォード。話は変わるが」
キルステンさんが一枚の紙を俺に手渡してきた。
紙には住所が書き記されている。
王都の中流階級向けの住宅街だ。
キルステンさんの自宅だろうか。
「お前たち、生活の拠点をケルタスから王都に移すと言っていたな」
「そのつもりです」
「ならばいつまでも宿屋で宿泊していては不便だろう。これからはそこに住め」
「えっ!?」
俺とプリシラとマリアは同時に驚きの声を上げた。
書かれていた住所は冒険者ギルドがあてがってくれた俺たちの住む家だった。
「不満か?」
俺たちが口を開きっぱなしにしていると、キルステンさんがそう尋ねてきた。
「い、いえ……。驚いていただけです」
「ランフォード家やルミエール家の屋敷のように大きくはないが、四人で暮らすにはじゅうぶんの家だ。家具もそろっているからすぐにでも生活拠点を移して暮らせる」
「あ、ありがとうございます」
「でも、わたしたち、家賃を払えるほどお金は――」
「心配するな。ギルドが無償でお前たちに貸す。ただし――」
今回の件のように、危険な仕事に率先して挑んでもらう。
そうキルステンさんは言った。
キルステンさん、第一印象は冷たい感じがしたけれど、本当は思いやりのある人なんだな。
そうして俺たちは宿屋『ブーゲンビリア』を去り、住宅街の一軒家に引っ越すことになったのであった。
「アッシュさんたち、ここを出てっちゃうんですねー」
宿屋の娘フレデリカは残念そうだった。
「今まで世話になったな。ありがとう」
「それにしても困ったなー」
「『困った』?」
「わたしー、友達に言いふらしちゃったんですよねー。アッシュさんと恋仲だって」
「なっ!?」
「なーんて、ウソでーす」
フレデリカはぺろりと舌を出した。
「ときどき遊びにいってもいいですかー?」
「もちろんだ」
「よかったー。これっきりの関係じゃないんですねー」
悔いが残らないよう、その日は食堂でたらふく夕食を食べた。
そして翌朝、俺とプリシラとマリア、スセリは『ブーゲンビリア』を発った。
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