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6-4

 プリシラとスセリが沐浴を終えると、俺たち三人は山を下りて村に帰ってきた。

 ……もちろん、服はちゃんと着て。


 それからノノさんの家に戻り、お願いされたとおり、カバンいっぱいのキノコを彼女に渡した。


「これでよかったでしょうか」

「ちょっと待っててねー」


 カバンをひっくり返してテーブルにキノコをぶちまけたノノさんは、それを一つずつ手に取って見ていって、そのたびに「うん」「これは違うわね」などと言いながら二つのカゴに分けていった。依頼されたキノコとそうじゃないのを分けているのだ。


 しばらくしてすべてのキノコを分け終えると、ノノさんは「ありがとうー」と俺たちに礼を述べた。

 二つのカゴは両方とも同じくらいだ。

 つまり、あの中で正しいキノコは半分しかなかったわけか……。


「こっちが私のお願いしたキノコでー、こっちがそうじゃないキノコねー」

「すみませんノノさま……。間違いがいっぱいで。わたしが図鑑で確認したんです……」

「ううん。上出来よ。実を言うともっと少ないかと思ってたもの」

「ほっ。ならよかったです」

「それはそうと――」


 ノノさんがプリシラの獣耳に手を触れる。


「髪の毛、濡れてるわね」

「山の中腹の泉で沐浴してきたんです」

「ああ、あの泉! 私も錬金術の材料採集のとき沐浴してるのよー。冷たくて気持ちいいわよねー。でも、ちょっと林の奥のほうにある隠れた場所だったのによく見つけられたわねー」

「も、沐浴って……裸になってですか?」

「もちろんよー。……プリシラちゃん、どうした? 顔が赤いわよ」


 プリシラは俺から目をそらしてもじもじしている。


「プリシラはの、アッシュに裸を見られたのじゃ」

「いやそれ、お前のせいだろ!?」

「はうううう……」


 プリシラはますますちっちゃくなってしまった。


「あらまあ」


 ノノさんが頬に手を添えて笑みを浮かべる。


「それならー、アッシュくんは責任を取らなくちゃねー」


 へ? 責任?


「村の習わしでは、女性の裸を見た男性はその女性と結婚しなくちゃいけないのよー」


 な、なんだってー!?


「け、けけけけけけ結婚ですかっ!?」


 プリシラが獣耳をピンと立てて、天井に頭をぶつけそうになるくらい飛び上がった。

 顔を両手で覆う。

 そうしながら指の隙間からちらちらと俺をうかがっている。


「メ、メイドの分際でアッシュさまと結婚だなんてそんな……。い、嫌ではありませんけれど……、身分の違いが……。で、でもでもでもアッシュさまがよろしいとおっしゃるのならわたし……。ふ、ふつつかものですが、妻として――」

「なーんて、ウソよー」

「はわわっ!?」


 ノノさん……。

 なんていうか、おちゃめな人だな……。

 彼女の冗談が受けたのはスセリだけで、スセリは腹を抱えて「のじゃじゃじゃじゃ」と毎度のヘンテコな笑い声をあげていたのであった。

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