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57-4

 プリシラに背中を押されて階段の前まで連れてこられた。

 無限に続く階段。

 その魔法が解けたのなら二階に上がれるはずだ。


「スセリさま。一言申し上げますと」


 マリアがびしっとスセリを指さす。


「アッシュはわたくしの婚約者ですのでお忘れなきよう」

「そんなもの、取ったもの勝ちなのじゃ。のう、プリシラよ」

「えっ? ……はっ、はいっ。取ったもの勝ちですっ」


 緊張が走る。

 火花を散らせる三人の少女たち。


「……まあ、今は屋敷の探索が最優先ですわね」

「そ、そうですね」

「内心ほっとしておるじゃろう? アッシュよ。のじゃじゃじゃじゃっ」

「うっ」

「アッシュ」

「アッシュさま」


 プリシラとマリアにギロリとにらまれて俺は目をそらしてしまった。



 階段を上る。

 今度は無限には続かず、二階に上がることができた。

 迷路となっていた一階とは異なり、二階はごくありふれた屋敷の様相。


 窓から景色が見える。

 青空の下に緑の平野。畑と集落。のどかな旧オストヴィント領が広がっていた。


「では、まずはこの部屋から見てみましょうか」

「いや、そこではないぞ、プリシラよ」

「らしいですわね」

「えっ?」


 強力な魔力が屋敷の奥から感じられる。

 オストヴィントの隠した『なにか』はそれだ。

 魔法の才能がないプリシラだけがきょとんとしていた。


 魔力の感じるほうへと俺たちは進む。

 長い廊下を進み、つき当たりを曲がり、さらに進む。


 邪悪な魔力だ。

 肌がぴりつく。

 スセリとマリアは真剣な面持ち。むろん、俺もだ。

 魔力を感じ取れないプリシラはそんな俺たちを見て不安になっている。


 この魔力の性質、以前にも感じたことがある。

 オストヴィントの隠していたものがそれと同じものだったとしたら、事態はかなり重大だ。


「ここなのじゃ」


 大きな扉の前にたどり着く。

 魔力はこの扉の先から感じる。

 他の部屋と異なり、この扉だけノブに鎖が巻かれ、開けるのを禁じられていた。


「きゃっ」


 マリアが鎖に手を振れた瞬間、バチッと小さな電撃が生じ、マリアは反射的に手を引っ込めた。

 これも魔法の力だ。

 扉の先に行こうとする者を拒絶している。


「解けよ」


 スセリが魔法を唱えると鎖に亀裂が入り、あっけなくちぎれた。

 俺はおそるおそる扉のノブに手を触れる。

 電撃は起きない。

 ノブを強く握ってひねり、扉を開けた。


 そこは書斎だった。

 屋敷の主が使っていたのだろう、上等なイスと執務机がある。

 父上の書斎を思い出す、なんの変哲もない部屋。


 ただし、執務机の上に置いてある水晶玉を除いては。


「な、なんですの、これ……」

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