6-3
そんなこんなで俺とプリシラ、スセリの三人でキノコを採集しながら山を登り、中腹へとたどり着いた。
ノノさんから渡されたカバンの中身はキノコでいっぱいになっている。
これだけ採れればじゅうぶんだろう。
「よし、ちょうどいい頃合いだし、村に戻るか」
「はいっ、アッシュさま」
「……待つのじゃ」
「どうしました? スセリさま」
スセリが真剣な面持ちで林の中をじっと見つめている。
あの先になにかあるのだろうか。
「奥へ進むのじゃ」
そう言うとスセリは林の中に入っていってしまった。
どうしたんだ一体。
俺とプリシラは訝りながらスセリの後を追う。
やぶをかき分けて林の奥へと進んでいく。
そして林を抜けるとそこは――、
「泉なのじゃ!」
開けた空間。
その真ん中に丸くて青い泉があった。
「わー、キレイな泉ですー」
プリシラが水際に寄って身体を乗り出し、泉を覗き込む。
俺も彼女の隣に立って泉を覗き込んでみると、泉は底が見えるほど澄んでおり、きらきらと太陽の光を反射させていた。
俺とプリシラの顔もゆらゆらと揺れながら水面に反射して映っている。
なにかひらひらと動く影が水中に見える。
魚だ。
泉に手を入れてみると驚くほど冷たかった。
「山を下りる前にここで休憩するか」
「そうしましょうっ」
「うむ。それではさっそく――」
スセリが指をパチンッと鳴らす。
その瞬間、スセリの衣服が消えて全裸になった。
「なっ!?」
「スセリさま!?」
「沐浴なのじゃ」
一糸まとわぬ姿となったスセリは思い切り助走をつけて跳躍し、泉に飛び込んだ。
ドボンッ。
ばらまかれる水しぶき。
つめたっ!
俺とプリシラは思わず目をつむった。
「のじゃーっ。気持ちいいのじゃーっ。はははははっ」
スセリは泉を泳いだり、水を俺たちに向かってかけたりして遊んでいる。そして泉の中に潜ったかと思えば器用にも魚を捕まえて俺たちに見せつけてきた。
魔物が出るかもしれないのに……。のんきなヤツだ。
「プリシラ。おぬしも泳ぐのじゃ」
「わ、わたしもですか!?」
プリシラが俺のほうを見る。
泉で泳ぐとなると、必然的にスセリのように服を脱がなくてはならない。
「……俺は後ろを向いてるから、沐浴してきたらどうだ」
「ですが……」
「結構気持ちよさそうだぞ」
「なにをもたもたしておるのじゃ。ていっ」
スセリがプリシラに向かって指をさす。
その途端、プリシラのメイド服が下着ごと消え失せ、彼女も裸になった。
彼女の白い肌がさらされる。
あ然とする俺とプリシラ。
プリシラはなにが起こったのかわからず、裸のまま棒立ちになっていた。
そして次の瞬間、
「ひゃああっ!」
悲鳴を上げ、胸を腕で隠してしゃがんだ。
俺はとっさに後ろを向く。
「うわああああああん! スセリさまひどいですよーっ!」
「のじゃじゃじゃじゃっ」
ドボンッ。
プリシラが泉に飛び込む音が聞こえた。
服を消したのはいいが……いや、よくないが、ちゃんと元に戻せるんだろうな?
俺は沐浴する二人を背にし、本を読んで時間を過ごす。
……。
……。
……。
魔物も出ないし、ここは安全みたいだな。
ぱしゃぱしゃと水浴びをする音を聞きながら本のページをめくっていく。
だんだんと眠くなってきた……。
と、そんなとき、
「アッシュ。もうこっちを向いてもよいぞ」
「そうか――っておわっ!?」
「ひゃああっ!」
スセリに言われて振り返ると、たった今、泉から出てきたばかりの全裸の二人が俺の目の前にいた。
「ぜんぜんよくないだろっ!」
「のじゃじゃじゃじゃっ」
「はうううう……」
プリシラは先ほどと同じく両手で上半身を隠してしゃがみこみ、スセリは羞恥心というものがないのか、全裸のまま堂々と俺の前に立っていた。




