55-2
「それともう一つ、おぬしにはやるべきことがある」
「やるべきこと?」
「『ログインボーナス』を毎日欠かさず受け取るのじゃ」
ろぐいんぼーなす……?
聞きなれない言葉に俺は首をかしげる。
「毎日一回、ゲームで遊ぶとご褒美がもらえるのじゃ。アッシュはワシの代わりに毎日ログインボーナスを受け取るのじゃぞ」
「それって難しいのか?」
「ゲームを起動するだけでよいのじゃ」
「わかった。ログインボーナスっていうのを受け取ればいいんだな」
そうして俺はスセリから端末を託されたのだった。
スセリが部屋を出ていき、一人になる。
さっそく充電してみるか。
テーブルに端末を置く。
そして魔書『オーレオール』を片手に持ち、もう片方の手を端末にかざす。
精神を集中させる。
『オーレオール』から流れ込んでくる魔力を操り、端末にかざした手に集める。
そしてかざした手から端末に魔力を送り込む。
魔力の流れが青い光となって可視化され、端末に流れ込んでいくのが見えた。
充電できただろうか。
側面の突起を押し、端末を起動させる。
確か、画面左上を見れば充電できたかわかるってスセリは言ってたな。
画面左上には緑色の太い線が三本並んでいる。
この太い線がしっかり三本並んでいれば充電できているらしい。
線が残り一本になり、色が赤くなると充電が尽きてきた合図。
ジリリリリッ。
「おわっ!?」
端末が急にベルを鳴らした。
いきなり鳴り響いたので、危うく落とすところだった……。
「えーと、これをなぞればいいのか……?」
端末に表示されている緑の円に触れ、左から右に動かす。
するとベルが鳴りやみ、画面が切り替わってセヴリーヌの顔が映し出された。
「もうかけてきたのか……」
「えへへ。アッシュとまた話したくなったんだ。スセリはいないよな?」
「俺一人だ」
「よし、アッシュを独り占めだ」
それから俺とセヴリーヌはおしゃべりに興じた。
会話の内容は互いの近況について。
俺は船の上での出来事や王都について話した。
「ふーん。魔剣アイオーンか」
「セヴリーヌは知っているのか? アイオーンを」
「魔王ロッシュローブの剣だろ。なんかすごい剣だってのは知ってるぞ」
「ロッシュローブ教団はアイオーンを使ってなにをしようとしてるんだ?」
「知らん」
「……そうか」
今度はセヴリーヌが自分の日々について話した。
どうやら彼女は毎日『夏のクジラ亭』に足を運んで食事しているらしい。
「あのヴィットリオとかいうおっさん、ちょっと怖いけど料理はすごくおいしいぞ」
「うらやましいな。ヴィットリオさんの料理を毎日食べられるなんて。おかみのクラリッサさんは元気か?」
「クラリッサもいつも元気だぞ。いいやつだな、クラリッサ」
みんな元気に暮らしているようだ。
安心した。




