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「アッシュよ。とにもかくにもアイオーンを手に入れるのじゃ。王国騎士団とエトガー・キルステンを出し抜いての」
俺が黙りこくっていると、スセリは俺を指さす。
「これはおぬしのためでもあるのじゃ。ゆえに案ずるでない。ワシを信じるのじゃ」
企みが見え隠れする不敵な笑みをされてはとうてい信じられなかった。
「その顔は信じておらんの。そうじゃのう。ならばアイオーンを手に入れたらワシの真意を教えるのじゃ」
そのころにはすでに、スセリの野望を阻止するには手遅れになっているのは間違いなかった。
「アッシュならば精霊剣承を――」
そのとき、遠くから爆発音がしてスセリの言葉を遮った。
爆発音がしたほうを振り向く。
その方向から煙が立ち昇っていた。
戦闘がはじまったのか!
俺とスセリは会話を中断して駆けだした。
爆発がした場所へとたどり着く。
そこには獅子の姿を模した大型の機械人形がいた。
雄々しきたてがみ。
両前足の爪で切り裂かれたらひとたまりもないだろう。
周囲には王国騎士団の人たちが倒れている。
立っているのは、剣を構えて機械人形と対峙しているキルステンさんのみ。
「やれやれ。情けないありさまなのじゃ」
「スセリ・ランフォード……」
機械人形のそばにはローブをまとった人物が一人、立っている。
目深にかぶったフードから鋭い眼光が見える。
――ナイトホークだ。
「本物の『オーレオール』をわざわざ持ってくるとはな。さがす手間が省けた」
「それはこっちのセリフなのじゃ、ナイトホーク。おぬしの持っているアイオーンをいただくのじゃ」
ナイトホークは片手に漆黒の剣を握っている。
魔剣アイオーンだ。
「奪えるものなら奪ってみるがいい。――いけ」
ナイトホークが指示すると、獅子型の機械人形が俺とスセリめがけて突進してきた。
俺とスセリは真横に飛び退き、突進の直線上から逃げる。
狙いを外した機械人形は塔の壁に激突した。
壁は粉砕され、穴が空いた。
機械人形のほうは無傷。
機械人形は牙の生えそろった口を大きく開き、俺に向かって飛び掛かってきた。
回避は間に合わないと判断し、魔法障壁で防御する。
正面に展開した半透明の障壁にぶつかる機械人形。
障壁に亀裂が走る。
一度は防いだが、二度目はないだろう。
だが、それでじゅうぶんだ。
「ほとばしれ雷!」
機械人形が魔法障壁を破壊した瞬間、俺は魔書『オーレオール』から得た魔力を雷に変えて解き放った。
弾ける雷鳴と紫の閃光。
瞬時にして電撃が走り、目の前の機械人形を貫いた。




