54-3
俺とスセリを乗せて夜の街を疾走する霊馬。
夜でもなお賑わう繁華街を駆け抜ける。
すれ違う人々は皆、俺とスセリのほうを驚いた表情で振り返る。
馬車を二台ほど追い越して門をくぐり、王都の外へと飛び出した。
街道を風のごとく走る。
スセリは上手にたづなを操って霊馬を走らせている。
俺は振り落とされまいと、彼女の腰にしがみつく情けない格好をしていた。
王都から離れ、麦畑の農村を抜け、見晴らしのよい丘陵へと至る。
霊馬が街道から外れた。
風圧に抗って前を見ると、俺たちの進む先に四角い塔のような建造物がいくつも立ち並ぶ光景があった。
ビルと呼ばれる古代人の遺跡群。
その手前までたどり着くと、霊馬は足を止めた。
「いつまで抱きついておるのじゃ」
スセリがニヤニヤした顔で俺を見ていた。
霊馬から降りる俺たち。
スセリが再び指を鳴らすと、霊馬はいななきながらその姿を消した。
「ここがロッシュローブ教団の本拠地なのか?」
「『偽オーレオール』を持った信者がここに来たのは確かなのじゃ」
ここに来たのは初めてだが、どういう場所かは知っている。
極めて広い遺跡群で、やみくもに歩くと即座に道に迷ううえ、凶暴な機械人形や魔物が多数徘徊している危険な場所だと王都の冒険者ギルドで教わった。そのため今はギルドが探索を禁じている。
隠れ家にするにはうってつけの場所というわけだ。
「エトガー・キルステンと王国騎士団はすでに遺跡に入ったようなのじゃ」
「スセリ。引き返すぞ」
「――と言われてワシがおとなしく従うと思うか?」
「……だよな」
俺とスセリは危険な遺跡群へと足を踏み入れた。
石畳とは違う、濃い灰色に舗装された地面を歩く。
地面には道に沿って白い線が引かれている。スセリによるとこの線に沿って『自動車』という人を運ぶ機械が走っていたらしい。
周囲には途方もなく高い塔がいくつも立っている。
自分が小さくなったかのような錯覚をおぼえる。
塔はどの側面にも無数のガラス窓が張られていて、満月を映して芸術作品になっている。
「エトガー・キルステンたちはあっちに行ったようなのじゃ」
スセリの魔法で彼らの痕跡を辿り、遺跡の奥へと進んでいく。
途中、破壊された機械人形や魔物の死体をいくつも見つけた。それがこの道が正解であるのを示していた。
「スセリ。お前には『オーレオール』があるのにどうしてアイオーンにこだわるんだ」
「その質問、前にもされた気がするのじゃ」
「精霊剣承に関係するようなことをナイトホークは言ってたが……」
スセリ、ナイトホーク、夢の中で出会った精霊竜――皆、精霊剣承について知っているようだが、俺だけはろくに知らなかった。精霊剣承というものが具体的にどういうものかすら。
わかっているのは、三者にはそれぞれの思惑があること。




