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53-4

「どうやって見つけたんだ?」

「見つけてはおらん。教団から接触してきたのじゃ」

「なんだって!」

「指示したこの場所まで来て魔書『オーレオール』を渡せば、ワシらをつけ狙うのは止める――とな」


 やはりまだロッシュローブ教団は『オーレオール』を狙っているのか。


「言うまでもないじゃろうが、『オーレオール』はあやつらには渡さんぞ」


 俺もそれには同意した。

 教団が約束を守るとは到底思えない。

 奴らに『オーレオール』を渡した瞬間、抹殺されるのは目に見えている。


「このことをさっそく冒険者ギルドに報告しよう」

「ダメなのじゃ」

「なっ、なんでだよ!?」

「ギルドと協力したら、アイオーンをワシのものにできんじゃろう。ギルドが横取りするに決まっておるのじゃ」


 スセリは魔剣アイオーンに執着している。

 魔王の剣を自分のものにしようとするなんて、なにを企んでいるのやら。ろくでもない企みなのは間違いないだろうが。


「スセリが黙っているのなら、俺が冒険者ギルドに報告する。約束したろ。手に入れた情報はギルドにも伝えるって」

「どうじゃったかのう。最近物忘れがひどくてのう。のじゃじゃじゃじゃっ」


 俺が部屋を出るとスセリも後をついてきた。

 魔法で俺を拘束するかと思っていたから拍子抜けだった。



 そして二人で冒険者ギルドへと赴き、ロッシュローブ教団が取引を持ちかけてきたことをギルド長のキルステンさんに話した。当然、取引をする場所も。

 すると、キルステンさんは意外な言葉を口にした。


「この場所か。それならギルドでも把握している」

「えっ」


 ギルドはすでに知っていたのか?


「そこは教団が使っている情報交換の場所の一つだ。我々はそこから情報を得るため、信者に扮したギルドの人間を何人か送り込んでいる」

「あえて泳がしておるわけじゃな」

「そうだ」


 だとすると、ギルドは俺たちよりもずっとロッシュローブ教団の活動を把握しているのだろう。


「それにしても、取引か。お前はなんと返事をした」

「条件をのむと言ったのじゃ。もちろんウソなのじゃ。奴らに『オーレオール』は渡すつもりは毛頭無いのじゃ。のじゃじゃじゃじゃっ」

「……ふむ」


 考え込んでいるのだろう。黙りこくるキルステンさん。


「これは好機かもしれんな」


 そうつぶやく。

 それから彼は俺たちにこう指示した。


「スセリ・ランフォード。そしてアッシュ・ランフォード。奴らとの取引に応じろ。約束の日時に指定された場所へ行くんだ。むろん、取引に応じるフリをするだけだ。奴らに罠を仕掛けろ」

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