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52-2

「書いていないのは当然。ワシの独断だからなのじゃ」

「……あいにくだが、援助はできん。ロッシュローブ教団にこれ以上関わるな」


 当然の返事だな。

 スセリは呆れたようすで肩をすくめる。


「やれやれ、なのじゃ。一国の王たるものが器の小さい」

「なんとでも言うがいい」

「魔王を崇拝するあの教団には国もてこずっておるのじゃろう? そこにこの『稀代の魔術師』が力を貸してやると言っておるのだから、素直に従うのじゃ」

「『稀代の魔術師』よ。お前の眼からはなにか邪悪なものを感じるのだ。先代の王たちはお前に不死の力を願っていたが、私は違う。得体の知れぬお前と深く関わるつもりはない。私からすれば、お前もロッシュローブ教団も大差ないのだ」


 グレイス陛下は賢明な人だった。

 邪悪かどうかはわからないが、スセリの目からときおり底知れぬ野望を俺も感じることがあった。


 それからグレイス陛下からロッシュローブ教団に関する質問をいくつかされ、俺たちは知る限りそれに答えた。


「よくわかった。大儀であったぞ」

「陛下にお目にかかれて光栄でした」


 そして謁見の時間が終わると、俺たちは城を後にした。


「期待外れだったのじゃ」


 スセリはくやしがっていたが、これでよかったのだ。

 俺たちはすべき役目を果たした。


「仕方ない。ワシらはワシらでロッシュローブ教団について調べるのじゃ。前にも言ったが、ワシらはすでに教団に命を狙われておる。こちらからあちらを潰さぬ限り、常に危険は付きまとうのじゃ」


 俺たちは教団の手先であるナイトホークやミスティアと一戦交えた。そのうえ、ガルディア家でナイトホークの企みも阻止した。なりゆきとはいえ、そのせいで俺たちと教団は明確に敵対関係になってしまったのだ。


「そういうわけじゃから、しばらく王都に滞在して、ロッシュローブ教団をさぐるのじゃ」

「スセリ。ロッシュローブ教団をさぐるのは止めない。だが、手に入れた情報は冒険者ギルドに伝えること。独断で危険なまねはしないこと。いいな?」


 このあたりが妥協点だろう。ダメと言って素直に聞き入れる人間ではないからな。

 スセリは「しかたないのう」とため息をついた。


「わたくしたちで悪の教団をやっつけますわよっ」


 マリアは依然として乗り気だった。



 それから宿屋『ブーゲンビリア』にいったん帰った後、俺とプリシラは二人で郵便局に行った。

 ケルタスにいる『夏のクジラ亭』のクラリッサさんとヴィットリオさん、それとプリシラの友だち、ミュー・エルリオーネに手紙を送るため。

 約束だったからな。


「お返事が楽しみですねっ」


 にこにこしながらプリシラは言った。

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