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5-7

 スセリが目を閉じて精神を集中させる。

 魔書『オーレオール』から俺の身体に魔力が駆け巡る。

 頭の中に魔法の呪文が浮かび上がってくる。


 俺はベッドの中で苦しむ女の子の前に立つ。

 それから手をかざして唱えた。


「癒しの光よ!」


 女の子の身体をやわらかな光が包み込む。

 効果はすぐに現れだした。


 真っ赤だった女の子の顔が徐々にもとの色に戻りだし、荒かった呼吸も落ち着き始めた。

 女の子体調が治まると、包み込んでいた光が消えた。

 ノノさんが女の子の額に手を当てる。


「熱が下がってるわ!」


 それから女の子が目を開き、意識を取り戻した。


「おとうさん……。おかあさん……」


 身体を起こした女の子に母親が抱きついた。


「ありがとうございます! 冒険者さん、あなたのおかげです!」


 父親が俺の手を強く握り、涙を浮かべながら感謝の言葉をくれた。

 ノノさんはぽかんと口を開けたまま目をしばたたかせている。


「治癒魔法が使えるの……? アッシュくん」

「どうやらそうみたいですね」

「ワシの最高傑作に不可能は無いのじゃ」


 えっへん、とスセリが平たい胸をそらした。


「すごいわぁ!」


 ノノさんが飛び上がるほど驚く。


「治癒魔法は国王専属の最高位の魔術師しか使えないような奥義の中の奥義よ。本来ならとっても難しい儀式を経て魔法を発動させる必要があるのに、アッシュくんは一言唱えるだけで使えちゃうだなんて。びっくりだわ」


 そ、そんなすごいことなのか……。

 治癒魔法が高位の魔法というのは家庭教師から教わっていたので知ってはいたが……。

 はっきり言って、魔法を唱えるときは『オーレオール』に操られているような状態だからいまいち実感がわかない。


「あの、冒険者さん、いえ魔術師さま。報酬の件なのですが……」


 女の子の父親が表情を曇らせ、語尾を濁す。

 だから俺はこう答えた。


「報酬はいりませんよ」

「えっ!?」


 女の子の父親はすっとんきょうな声を上げる。


「ちょっと魔法を使ったくらいですし、報酬は結構です」

「で、ですが……」

「支払うお金があるのなら、娘さんのために使ってあげてください」


 俺がそう言うと、女の子の両親は俺に重ねてお礼を述べた。

 プリシラは「さすがアッシュさまですっ」と笑顔になる。


 ノノさんも「アッシュくん、やさしいのねぇ」と感心している。

 それに対してスセリは「やれやれ」と肩をすくめている。


「アッシュよ。ノノが今言ったように、治癒魔法は超高等魔法なのじゃぞ。にもかかわらず『ちょっと魔法を使ったくらい』で済ますとはのう」

「文句があるのか?」

「別にないのじゃ。しかし、普段からワシをもっと敬うべきだと思うのじゃがの」


 まさに『万能』というべき、ランフォード家の家宝『オーレオール』。

 その絶大な力は身をもって知っている。

 父上が召喚したゴーレムを葬り去った攻撃魔法……物質を転送させる転移魔法……そして今回の治癒魔法。


 そんな魔書を創り出したスセリは普通の魔術師とは一線を画した偉大な存在なのだろう。

 だがそれでも、俺はどうしても彼女をただの銀髪の少女としか思えなかった。

 見た目か……。あるいは普段の言動のせいだろうか……。


「一言で言えば」

「言えば?」

「威厳が足りない」

「のじゃ!?」

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