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「安心するのじゃ。おぬしも年をとるにつれ、老いる自分と折り合いをつけられるようになるのじゃ。若いおぬしにはまだわからんじゃろうが」
「ですが」
「老いぼれるのも存外悪くはないぞ。のじゃじゃじゃっ」
スセリのおちゃらけた態度から、どうあがいても説得できないとラピス王女さとったのだろう。一応は諦めてくれたらしく、王女は「また、あらためて会いにゆきます」と言い残して俺たちの前から去っていった。
見計らっていたのだろう。彼女と入れ替わりに、先ほど城を案内してくれた白髪の老紳士が現れる。
「謁見の時間です」
老紳士の後に続いて俺たちは再び城の中を歩く。
「ラピス王女は多感な年ごろなのです」
どうやら先ほどのやり取りを聞いていたらしい。
老紳士が言葉を発したのはその一度きりで、あとは黙々と歩くばかりだった。
そして謁見の前へとたどり着いた。
「待っておったぞ。ランフォードの子たちよ」
玉座に座っているのはこの国の王、グレイス陛下。
隣にいるのは王妃。
「それと、おぬしがスセリか?」
「うむ。ワシがスセリなのじゃ」
国王陛下相手にもスセリはいつもの調子だった。
俺たちは三人は緊張しているというのに。
「不老の魔法を会得した『稀代の魔術師』が、こんな少女とはな」
グレイス陛下は物珍しげにスセリをじろじろ観察している。
「お前は本当にスセリなのか?」
「疑っておるのか」
「私はてっきり、お前が詐欺師だとばかり思っていたのだ」
「なっ! ワシが詐欺師じゃと!?」
「先代、先々代の王に『不老の魔法をつくりだす』などとデタラメを言い、研究資金という名目で金をせしめた詐欺師だとな」
「ワシは正真正銘、ランフォード家の始祖スセリなのじゃっ」
スセリは憤慨した。
グレイス陛下が「がっはっはっ」と豪快に笑う。
「信じるぞ。信じてやろう」
「本当に信じておるのか……?」
けっこう、気さくな王さまだな。
それにしても、このスセリを手玉に取るなんて。さすがは王さま。
「陛下。次の謁見が控えておりますので」
老紳士が促すと、グレイス陛下は「うむ」とうなずき、本題に入った。
「聞かせてもらおうか。ロッシュローブ教団について」
俺たちはロッシュローブ教団との因縁をグレイス陛下に話した。
教団の信者、ナイトホーク。
魔剣『アイオーン』がヤツの手に渡ってしまったこと。
もう一人の刺客、ミスティアとの船上での戦い。
グレイス陛下はあごをなでながら、俺たちの話に真剣に耳を傾けていた。
「王よ。ワシらはナイトホークからアイオーンを取り戻す。そのための援助を頼むのじゃ」
「お前たちが取り戻す? 冒険者ギルドからの書状にはそんなこと書いていなかったぞ」




