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そして謁見の日。
俺とプリシラ、スセリ、マリアの四人は王城へと訪れた。
都市の中央に位置する、王の住む巨大な城。
「これが王城……」
「間近で見ると気おされますわね」
「でも、真っ白できれいです」
俺とプリシラとマリアはあんぐりと口を開けながら城を見上げていた。
寝不足らしく、スセリは今朝からずっとあくびしていた。
緊張感がまるでないな、スセリ。
100年以上生きている彼女にとっては、一国の王と会うのも大したことないのだろうか。
堀にかけられた橋を渡り、門番が守護する城門をくぐる。
そして城の中へと入る。
床に敷かれた赤いカーペット。
天井にはきらめくシャンデリア。
城の内部は外観から想像した通り、豪華けんらんだった。
実家のランフォード家やディアの住むガルディア家も豪奢な屋敷だが、この城はそれ以上だ。
内装はもちろん、城そのものの規模も貴族の屋敷とは比較にならない。
やはり王族の住む場所となると格が違う。
「お待ちしておりました。ランフォードご一行さま」
メガネをかけた白髪の老紳士が出迎え、俺たちにうやうやしく礼をする。
老紳士に案内され、廊下を歩く。
城の内部は静かだ。
自然と俺たちも足音を立てぬよう、慎重な足取りになっていた――スセリ以外。
「緊張していらっしゃいますね」
老紳士が振り返って笑った。
廊下の途中で老紳士が立ち止まり、前の前の扉を開けた。
応接室らしき小部屋に案内された俺たちはソファーに腰を下ろした。
「謁見の時間までどうぞおくつろぎください」
老紳士が退室するのと入れ替わりに、メイドが紅茶とお菓子を載せたワゴンを押してきた。
目の前のテーブルに紅茶とお菓子が並ぶ。
湯気の立つ紅茶はハーブティー。
お菓子はビスケット。
スセリが真っ先にビスケットに手を伸ばし、口の中に放り込んだ。
「さすが王族の菓子。うまいのじゃ」
「スセリさま、よくこんなときに食べられますね……。わたし、緊張して食べられないです」
「いらんのならプリシラの分ももらうのじゃ」
スセリはプリシラのビスケットまでもむさぼった。
ビスケットを詰め込めるだけ詰め込んだせいで、リスみたいに両方の頬が膨らんでいる。
そして紅茶を味わおうともせず一気に飲んで、口の中のものを胃袋に流し込んだ。
「スセリさまはお城に来たことがありますの?」
マリアの質問にスセリは「うむ」と答えた。
「何度も招かれたのじゃ」
「何度も!?」
「ワシは『稀代の魔術師』なのじゃぞ」
そういえば、スセリは魔術の達人だったっけな。
普段の言動のせいですっかり忘れていたが。
「貴賓として招かれ、ぜいたくを尽くしたのじゃ」




