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それから俺とプリシラ、スセリ、マリアの四人は王都の冒険者ギルドへと足を運んだ。
ここが世界中にある冒険者ギルドの本部である。
施設の規模が大きいのは当然として、内装も驚くほど豪華で、王城と見まがうほど。
ギルドには大勢の冒険者が集っている。
ケルタスとは比べ物にならない。
俺たちはぽかんと口を開け、ただただ途方に暮れていた。
「いつまでつっ立っておるのじゃ」
スセリにヒジでつつかれる。
「そ、そうだな。まずは受付に行かないとな」
「正面のあそこが受付ですわね」
「ケルタスの冒険者ギルドからの書状は、このプリシラがしっかり持っていますっ」
受付に行き、受付嬢に書状を渡す。
書状を受け取った受付嬢は「少々お待ちください」と奥の部屋に消える。
それからしばらく経ち、待ちくたびれたと思ってきたころに彼女は戻ってきて「こちらへどうぞ」と自分についてくるよう促してきた。
階段を上り、二階へと上がる。
通路を歩き、最奥の部屋の前へと至る。
受付嬢が扉をノックする。
「入れ」
扉の奥からそう返事がした。
部屋に入る。
部屋は三方に書架があり、ずらりと書物が並べられていた。
そこにいたのは一人の青年。
端正な顔立ち。
同性の俺ですら息をのむほどの美貌。
しかし、眼は刃のように鋭く、他人を寄せ付けない冷たい印象を抱かせる。
彼を一言で表すなら――孤高の狼。
「私の名はエトガー・キルステン。冒険者ギルドの長をしている」
エトガー・キルステン。
彼はそう名乗った。
「おぬしがギルド長? ずいぶん若いのじゃな」
スセリが物おじせずそう言う。
「小娘に言われるとはな」
「ワシはこう見えて100歳を超えておるのじゃよ。のじゃじゃじゃっ」
「……」
スセリにおちょくられても、キルステンさんは無表情を貫いており、さっそく本題に入った。
「ケルタス支部からの書状は読ませてもらった。ロッシュローブ教団と浅からぬ関りを持ったらしいな」
「航海の途中で刺客を差し向けられました」
キルステンさんの視線が俺の持つ『オーレオール』に向けられる。
「お前がアッシュ・ランフォードか。『稀代の魔術師』が著した魔書『オーレオール』の継承者という」
「ワシがその『稀代の魔術師』スセリなのじゃ」
「子供のごっこ遊びに付き合うつもりはない」
「……アッシュ、説明してやるのじゃ」
俺はキルステンさんにスセリを紹介した。
ランフォード家の始祖で、不老の身であること。
魔書『オーレオール』の著者であること。
「……どうやら冗談ではないらしいな」
「書状にワシのことを書いていなかったとは。まったく、いかんのじゃ」




