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5-6

「『一応』ってどういう意味だ?」


 俺が尋ねる。


「まあ、会ってみればわかるのじゃ」


 クッキーを食べながらスセリが答える。


「会ってみてのお楽しみってわけか」

「おそらく楽しくはないじゃろうな」


 スセリは眉間にシワを寄せていた。


「私も会いたいわー、セヴリーヌさまに」


 でも、とノノさんは言葉を続ける。


「私が留守にしたら村の人たちは困るから」

「頼りにされているんですね、ノノさん」

「村で魔法が使えるの、私だけなの」


 そのときだった。ノックもなしに玄関の扉が開かれたのは。


「先生!」


 村人の男が息を切らして駆け込んできた。


「あらー、どうしたのー? そんなに慌てて」

「先生! 大変なんだ。ウチの娘がすっごい熱を出して!」


 途端、ノノさんの表情が真剣になる。


「すぐに行くわ」


 壁に立てかけてあった杖を手にし、男の後に続いて家を飛び出す。

 俺とプリシラとスセリも彼女たちを追った。



 村人の男の家。

 狭いその家のベッドには小さな女の子が寝かされていた。


 顔が燃えているように赤い。

 呼吸も荒い。

 ノノさんが女の子の額に手を当てて体温を確かめると表情を険しくした。


「ノノ先生、ウチの娘は……」

「ただの熱じゃなさそうね。今日はどこかへ行ってたのかしら?」

「村の子供たちと山へ遊びにいっていたらしいです」


 女の子の母親が答える。


「昨夜の体調はどうでした?」

「とても元気でした。熱を出したのは遊びから帰ってきた後です。最初は『手と足がしびれる』って言いだして、それから急に吐き出して……」

「身体がしびれる……。それに嘔吐症状……」


 ノノさんは自分の額に手を添えてなにやら思案する。


「山で毒草か毒キノコを食べちゃったのかもしれないわね」

「ノノ先生、娘を助けてください!」


 女の子の両親は祈るように両手を握り合わせてノノさんに助けを求めていた。

 ノノ『先生』と言われているだけあって、彼女は村人たちに頼られている存在なのだろう。

 つい先ほどノノさん自身も「自分がいなくなると村人たちが困る」と言っていた。


 確かに、素材を合成させて道具や魔法を生み出す錬金術師ならば医者にでも何にでもなれる。

 ノノさんは両親にうなずいて応える。


「すぐに解毒薬を錬金するわ。で、でも、解毒剤の材料はあったかしら……」

「それには及ばんぞ」


 錬金術をしに家を出ようとしたノノさんをスセリが止めた。


「スセリさま?」

「ワシ……じゃなかった。こやつが解毒の魔法を使えるのじゃ」


 スセリが俺の背中を押してノノさんの前に立たせた。

 俺は驚いて目を見開いて自分を指さす。


「お、俺が解毒の魔法を!?」

「万能の魔書『オーレオール』があれば可能じゃ」


 スセリがカバンから『オーレオール』を取り出して俺に手渡す。

 それから俺に手をかざす。


「ワシがおぬしの心の中に意思を送る。それで魔法が唱えられるようになるのじゃ」

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