50-4
「干せましたーっ」
プリシラの奮戦のおかげでシーツをすべて庭に干すことができた。
「つかれたー」
受付の少女がだるそうにレンガの花壇に腰を下ろす。
そしてだるそうにため息。
俺が見た限り、ほとんど働いていなかったようだが……。
しかし、今更になって気付いたのだが、シーツを干せたのはよかったものの、今は午後。陽が沈むまでにシーツは乾くのだろうか。
そのことを皆に話す。
「はうう……。確かにそうですね……」
「朝一番にママからお願いされていた仕事ですからー。めんどくて今までずっとほったらかしにしてたんですよねー」
呆れた子だ……。
都会の女の子って皆こんな不真面目なのだろうか。
「困りましたわね。どうしましょう」
「魔法で乾かせばよかろう」
スセリがあっさりと言う。
炎の魔法で乾かせ、と言いたいのだろうか。
シーツが焼けない程度に加減すれば、少々乱暴だが乾かせるかもしれない。
スセリが俺の背中に触れる。
刹那、頭の中に魔法の詠唱が流れ込んできた。
「今、ワシが『教えた』魔法を唱えるのじゃ」
促され、俺は庭の中心で魔法を唱えた。
俺の手のひらの上に、小さな光球が出現する。
まぶしく光り、汗が出るほどの熱を発している。
それは小さな太陽だった。
小さな太陽は徐々に浮遊し、俺たちの頭上へと至った。
庭が真夏みたいに暑くなる。
「これならすぐに乾くのじゃ」
「こんな魔法があったのか」
「へー。魔法ってこんなこともできるんだー」
受付の少女はぽかんと口を開けながら小さな太陽を見上げていた。
「これでママに叱られずに済みますー。ありがとう冒険者さんー。それじゃー」
「ちょっ、ちょっとお待ちになって!」
きびすを返した少女をマリアが慌てて引き留める。
首をかしげる受付の少女。
「なにかー?」
「あなた、ギルドを通していないとはいえ、冒険者のわたくしたちに依頼をしたのですから、報酬をお渡しなさい。少額で構いませんから」
「あ、そっかー」
受付の少女がポケットをあさる。
出てきたのは――銅貨二枚。
「はい、報酬」
彼女はその小銭をマリアに渡したのだった。
……田舎の村ならパンの一つくらいは買えるだろう。
本当に少額だな……。
「こらっ! フレデリカ!」
「ひえっ!」
受付の少女の前に母親らしき女性が現れた。
「フレデリカ。あなた、受付の仕事はどうしたの!」
「マ、ママに言いつけられた洗濯物干すのやってて……」
「まだやってなかったの!? それって朝にお願いしたのよ」
「ご、ごめんなさい……」
フレデリカ。
それがこの子の名前らしい。
「あ、でもシーツは全部干せたから。この人たちに手伝ってもらって」
「この人たちって……。もしかして、お客さん!? あなた、お客さんに手伝わせたの!?」
「ひええ……」
そうしてフレデリカは母親にこっぴどく叱られたのだった。




