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49-4

 目深にかぶったフードから唯一覗ける口が動く。

 魔法を唱えた!?

 ナイトホークから青白い光の魔力が溢れだし、腕を伝ってガーゴイルに流れ込んでいった。


 ガーゴイルの身体が溶けていく。

 そして新たな姿に変わっていった。

 溶けたガーゴイルはハンマーを手にした巨人の姿に変わった。


 ナイトホークが俺を指さす。

 その指示を受けた巨人の彫像が俺めがけてハンマーを振り下ろしてきた。

 避ける――いや、遅い!


「障壁よ!」


 俺はとっさに防護の魔法を唱えた。

 頭上に展開された魔法障壁が、巨人の振り下ろしたハンマーを受け止める。

 障壁に亀裂が入る。

 障壁が攻撃を防御してくれている間に後方に逃げる。

 巨人が再びハンマーを打ちつけると、今度こそ障壁は破壊されて消滅した。


「な、なんだこいつは!?」

「また魔物が現れたのか!?」


 夜の見張りをしていた水夫が俺たちの存在に気付いて合図を送ったのだろう。船の中から他の水夫たちがぞろぞろと甲板に現れる。

 巨人を従えるナイトホーク。

 それと対峙する俺。

 その周りを水夫たちが囲った。


「ナイトホーク! ここで戦うと船が沈む! バカなマネはよせ!」

「……やれ」


 ナイトホークは俺の言葉を無視して巨人に攻撃を指示した。

 巨人がハンマーを打ち下ろす。

 それを回避する。

 狙いの外れたハンマーは木製の甲板のを破壊して穴を開けた。


「ナイトホーク、お前もいっしょに海の藻くずになりたいのか!?」

「……なにか勘違いしているようだな」


 勘違い……?


「私はこの船を沈めにきた」

「なんだって!?」

「教団に歯向かう者に死を」


 こいつ、俺やスセリを葬るために船を巻き込むつもりだ!

 ……だが、今の声。


「お前、ナイトホークじゃないのか……?」


 今の声、女性の声だった。

 白いローブをまとっていたから、てっきりナイトホークと思っていたが……。


「我が名はミスティア。ロッシュローブさまの忠実なるしもべなり」


 ミスティア……。

 白いローブのその人物はそう名乗った。

 邪教、ロッシュローブ教団の刺客。

 ナイトホークの仲間だったようだ。


「魔書『オーレオール』を継承した者よ。ナイトホークをずいぶんと手こずらせたらしいな」


 ミスティアの口元がつり上がる。


「船に乗ったのは悪手だったな。ここなら逃げ場はあるまい」

「船を沈めたらミスティア、お前も海に呑まれるぞ」


 そう脅してみるが、ミスティアはまったく動揺していない。


「敵の心配をしている場合か? 愚かな。――やれ」


 ミスティアが巨人に攻撃を命じる。

 巨人がハンマーを振り上げる。


「縛れ!」


 ――そのとき、どこからかそんな声が聞こえ、巨人の足元に魔法円が浮かび上がり、そこから無数のいばらが伸びて巨人の身体を拘束した。

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