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5-5

 赤髪の魔術師ノノさんは俺の手を取る。


「それにしてもすごいわねー。カギを召喚できちゃうなんて。どういう修行を積んだのかしらー」

「修行とかそういうのはしてません」

「ますますすごいわー」


 どうして金属を召喚できるのか。

 どうして召喚したカギがカギ穴と合致するのか。

 そのあたりは実のところ俺にもよくわかっていなかった。


「お礼にお茶とお菓子をごちそうするわ。さっ、おうちに入って入って」


 ノノさんに背中を押され、俺とプリシラはノノさんの家に招かれた。


 ノノさんの家は、はっきり言って散らかり放題だった。

 部屋の中心には大きな釜がでん、と置いてあり、その周辺には干からびたイモリやら謎のドクロやら水晶玉やら、錬金術の素材らしきものがあちこちに転がっていた。


 あまりにの散らかりっぷりにプリシラは目が点になっている。

 ノノさんはまったく平気なようすで、「よっこらしょっと」と壁に木槌を立て掛けてから戸棚を漁り、茶葉の入った瓶を手にして釜の前に立つ。


「私、この村で錬金術で道具を作って生計を立ててるの。村の人たちには結構頼りにされてるのよー」

「この釜は錬金術に使うんですね」

「そうよー」


 錬金術の釜に茶葉を放り込みながらノノさんは言う。

 それから大きなかき混ぜ棒で釜を混ぜる。

 すると釜の中が光り輝く。


「来たれ!」


 ノノさんがそう唱えると、俺たちが座るソファの前のテーブルに魔法円が出現した。

 魔法円からは三人分のティーカップ、それとティーポットと皿に載ったクッキーが出現した。

 これが錬金術……。


「まるでアッシュさまの召喚術みたいですね」

「召喚術も錬金術も、理論の基礎はいっしょなのじゃ」


 魔書『オーレオール』から現れたスセリがそう答えた。


「あらー、いつの間にかお客さんが一人増えてるわー」

「お邪魔するのじゃ。茶と菓子を馳走になるぞ」


 俺がスセリと『オーレオール』のことをかいつまんで説明する。

 ノノさんは「驚きだわー」とぽんっと手を合わせた。


「魔書に魂を封じて永遠の命を手に入れたのね!」

「いかにも。ワシは無限の命を持っておるのじゃ」


 えっへん、と胸を張るスセリ。

 その間、プリシラが各々のティーカップに紅茶を注ぐ。

 湯気と共にカモミールのよい香りが立ち上る。


「『稀代の魔術師』スセリ。お名前だけは私も聞いたことあるのよ。同じく稀代の魔術師とうたわれたセヴリーヌっていう人と不老不死の研究をしていたんですってね」


 セヴリーヌ!

 思いもよらぬ人物の口からその名が出てきて、俺とプリシラは互いの顔を見合った。


「俺たち、そのセヴリーヌっていう人に会いにいく途中なんです」

「まあ、200年も昔の人なのに?」

「ワシと同様、セヴリーヌも不老不死を半分完成させておったんじゃ。今も『一応』生きておるのじゃ」


 スセリは意味深に『一応』の部分を強調した。

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