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「本気で言ってるのか!?」
「わーいっ」
「ノノおねえちゃんといっしょに暮らしたーいっ」
声を荒らげるネネ。
すっかりノノさんになついた妹二人は大喜びしている。
ネネは確かに立派だ。
プリシラと同じくらいの年齢なのに、大人に混じって冒険者として生計を立て、その上幼い妹たちの面倒も見ている。
それでも、彼女が子供であるという事実は覆せない。
環境が良いとは言い難いこの貧困層居住区で、子供だけで暮らしているのを俺は見過ごせなかった。
子供には保護者が必要だ。
俺はネネの機嫌を損ねさせるのを覚悟して、はっきりとそう言った。
子供である事実を突きつけられたネネは言葉を詰まらせ、顔を伏せてくやしげに歯ぎしりする。
ここでの暮らしは、ネネにとっての意地なのだろう。
自分は子供ではない。大人のように自立して生きていける――という意地。
その意地は彼女にとって害でしかない。
だから俺はあえてノノさんの味方をしたのだった。
「おねえちゃん……」
「おねえちゃん……」
妹二人がじっと姉を見つめて目でうったえる。
「いっしょに暮らしましょ。ね?」
ノノさんがにっこり笑顔でそう言った。
「……いきなりは無理だ。少し考えさせてくれ。アタシたちは捨てられた子犬じゃないんだ」
ここらが落としどころか。
ネネに考える時間をあげ、俺とノノさんは帰路に着いた。
ネネの妹二人が手を振って見送ってくれた。
「ネネちゃん、かわいいわね」
隣に並んで歩くノノさんが微笑む。
「あの子たちを助けてあげたいわ」
ネネは捨てられた子犬だ。
本人が否定しても、客観的にはそうだ。
今はなんとか暮らしていけているが、いずれ彼女たちには大人の助けが必要になるときがくる。
「アッシュくんが私の旦那さんになって、ネネちゃんたちは私たちの子供になる――っていうのはどう?」
「真面目に考えてください」
「真面目よ。ぶー」
ノノさんが頬をふくらませた。
そして翌日、俺たちはネネの返事を聞きに再び彼女の家を訪れた。
「おねえちゃん!」
「ノノおねえちゃん!」
家のドアをノックして「ネネちゃーん」とドア越しにノノさんが声をかけると、ドアが勢いよく開いてネネの妹たちが飛び出てきたのだった。
妹二人は目に涙を浮かべている。
なにかよくないことが起きたのを察した俺とノノさんは急いで家に上がった。
粗末なベッドにネネが横たわっていた。
ぜえぜえと苦しげに呼吸している。
顔が赤い。
額に手を当てると、燃えるように熱かった。
「熱があるわね」
「ノノおねえちゃん……」
「ネネおねえちゃんを助けて」
ノノさんにすがりつく妹二人。




