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47-4

 俺たちはテーブルを囲んで、いろいろとおしゃべりをした。

 ノノさんの暮らし。

 ネネの暮らし。


 ノノさんは自分の生活を楽しげに話していたが、ネネの反応は「へえ」「そうなんだ」といった淡泊なものだった。ノノさんはそんなこと気にしていないようすで、すっかり自分のおしゃべりに夢中になっていた。


 そしてネネが自分と妹二人の三人暮らしを語っている間、ノノさんは「すっごーい」「そうなんだー」「詳しく聞かせてちょうだいっ」とどんな些細な話題にも、腹をすかせた魚が餌を食らうがごとき勢いで乗ってきた。

 これにはネネも面食らったらしく、「あ、ああ……」と戸惑いながら自分のことを語り続けたのであった。


「冒険者かー。まだ子供なのにすごいわねー」

「子ども扱いするな」

「ふふっ。ごめんなさーい。でも、悪気はないのよ? ほめてるんだから。妹ちゃん二人のお世話をしながら冒険者をやってるなんてえらいえらい」

「ったく……。アンタ、変な人だな」


 ネネは少しでも子ども扱いされると不機嫌になるのだが、やたらと親しげに接してくるノノさんに調子を狂わされた彼女は呆れた面持ちをしていた。


「話を聞く限り、錬金術ってすごい魔法みたいだな。その気になれば大金を稼げてケルタスの一等地にも住めそうなのに、どうして小さな村で暮らしてるんだ?」

「うーん。どうして、って言われても……」


 ノノさんは天井を見上げる。


「そこで生まれ育ったから、としか言いようがないわねー。お父さんとお母さんのお墓もあるし」


 周辺に領地を持つ貴族から、雇われの錬金術師にならないかという話は何度もあったらしい。しかし、ノノさんはこれまですべて断ってきたという。


「私ってー、誰かの下で働くような性格じゃないし。でしょ?」

「はい」

「ああ」


 俺とネネは即答した。

 自分が変人であるのは一応自覚しているんだな……。


「逆に質問するけどー、ネネちゃんは今の暮らしで満足?」

「んなわけないだろ」


 視線をそらしてそう言い捨てる。


「なら、私といっしょに暮らしましょうっ」

「ええっ!?」


 ノノさんに提案され、ネネが声を上げた。


「あ、あのな……。わかってるだろうけど、アタシたちは血がつながってるわけでもなんでもない、赤の他人同士なんだぞ」

「でも私、運命感じちゃった」


 にっこり笑顔でそう言うノノさん。


「遠く離れた場所にいた、赤の他人同士だった私たちなのに、不思議な縁でこうして会っている。これって運命じゃないかしら」

「おい、アッシュ……」


 ネネが俺に助けを求めてくる。


「いいんじゃないか? 一緒に暮らしたらどうだ」


 しかし俺は、ノノさんの味方をしたのだった。

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