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47-2

 今日は冒険者の仕事がなかったため、ノノさんが宿泊している宿屋を訪れた。

 さすが表通りに面している宿屋だけあって、その装いは立派だった。

 俺たちが宿泊している『夏のクジラ亭』ももちろんすてきな宿屋だが、残念ながら見た目に関しては負けていると言わざるを得ないだろう。


 一泊いくらなのだろう……。

 どう見ても上流階級層の旅行者向けの宿屋だ。

 小さな村で暮らす女性が止まるような宿ではない。


「いちばんキレイな宿屋を選んだのー」


 やっぱりそうか……。

 ノノさん、金銭感覚疎すぎだ。

 ロビーで宿泊価格を尋ねたところ、一泊するだけで『夏のクジラ亭』で七日宿泊できる値段だった。『夏のクジラ亭』が特別安いことを差し引いても、かなりの高額だった。


「お金なら錬金術でいくらでもつくれるものね」

「それは犯罪ですからやめてください……」


 スセリといい彼女といい、特別な才能を持った人間は、普通の人とは常識が異なるのだろう。

 悪意がないのが余計にやっかいだな……。


 ノノさんがベッドに腰掛ける。


「それでアッシュくん。今日はどんなご用で来たのー? ふふっ。私に会いたくなっちゃった?」


 そう冗談めかす。

 俺はそれを無視して彼女に質問した。


「ノノさんに家族っているんですか?」

「そりゃあもちろんいるわよ。誰だってお父さんとお母さんがいるものよ。まあ、二人とも私が小さいころに流行り病で死んじゃったけど」

「あっ……・。え、えっと……。すみません」


 気まずくなった俺は謝った。

 ノノさんはまったく気にしていないようすで笑っている。


「両親がいなくて悲しいとか今は感じてないからいいのよー。両親が死んだの、ずっと昔だもの。でも、どうしてそんなこと尋ねてきたのー?」

「ノノさんに妹がいるのか知りたくて」

「いないわよー」


 いないのか。

 ケルタスの下流層居住区で暮らす冒険者の少女ネネについてノノさんに話した。

 性格はぜんぜん違うが、名前が似ていて赤い髪の色であるのがノノさんを彷彿とさせるのだ、と。


「私にそっくりのネネちゃんねー。会ってみたいわー。アッシュくん。私にネネちゃんを紹介してちょうだい」


 俺とノノさんはネネに会うため、東区の下流階級層へとやってきた。

 ガラクタを寄せ集めて作った、つぎはぎだらけの貧相な住居が立ち並ぶ光景は、本当にここが大都市ケルタスの一部なのかと疑わせる。

 ここは、繁栄の代償となった者たちが追いやられた場所なのだろう。


「私の住む村より貧乏な街があるのねー」


 ノノさんは物珍しげに周囲を見回しながら俺の後についてきていた。

 ネネの家に到着する。

 彼女の家も他の住居と同じく、板切れを張り合わせて組み上げた、かろうじて雨風をしのげる程度の代物だった。

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