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「ふふっ。やはりこれが一番手っ取り早い――ですわね!」
不敵な笑みを浮かべたマリアは光の剣を両手で握り、スセリロボへと躍りかかった。
しかし、その攻撃はあまりにも猪突猛進だったせいで、スセリロボの腕から発射された光線をよけきれずにくらってしまった。
光線の直撃で吹き飛ばされ、床に背中を打ちつけて倒れるマリア。
「マリアさま!」
「マリア、だいじょうぶか!?」
マリアを抱きかかえる。
一見したところ、ケガはしていないようだ。
ただ、背中を強く打ったせいか、苦しげな顔をしている。
「いたたた……」
「どこか痛いところはないか?」
「背中を打っていたいですわ。それと――」
「それと?」
「――おなかが減りましたわ」
……え?
俺とプリシラはあぜんとした。
「こんなときに言うか!? 腹が減ったなんて!?」
「いえ、本当に、急におなかが減りましたの……」
立ち上がったマリアは、すぐにふらついて俺にしなだれかかってきた。
青ざめた顔をしている。
ぐうううう……。
この音は――マリアの腹がすいた音か……?
「なにか食べ物をくださいまし……」
――ふふふ。どうじゃ。ワシの空腹魔法は。
スセリの仕業だったのか。
――むかし、平和的に戦争を終わらせる手段を研究していた時期があってのう。そのときに生み出した魔法がこれなのじゃ。
敵を空腹にさせ、無力化する魔法というわけか。
――うまくいったかと思いきや、かえって敵を必死にさせてしまった失敗魔法なのじゃが、おぬしらをもてあそぶにはちょうどいいじゃろう。
スセリロボがプリシラに向けて腕をかざす。
腕の穴から光線が発射される。
プリシラは俊敏な動きでそれを回避した。
「気をつけろプリシラ。アレをくらったら」
「とってもおなかがすいちゃうんですねっ」
腹が減って動けなくなるなんて、そんな間抜けな負け方だけはしたくない。
「ていやーっ!」
プリシラが間合いを詰め、スセリロボにロッドの一撃をくらわせる。
ガンッ。
ロッドは強固な装甲にはじかれてしまった。
攻撃が通じないとわかるや、すぐさま飛びのくプリシラ。
「放て!」
俺は電撃魔法を唱えた。
閃光と雷鳴を伴って放たれたいかずち。
しかし、その攻撃を受けてもスセリロボはびくともしなかった。
――たとえ『オーレオール』の力をもってしても、スセリロボに魔法は通じんのじゃ。
打撃も魔法も通用しないなんて……。
――腹ペコ光線発射なのじゃっ。
スセリロボの腕から発射される光線から俺たちは逃げ回るしかなかった。
これではらちが明かない。
光線の威力自体は皆無で、建物を破壊こそしないものの、もし浴びてしまえば極度の空腹に陥って戦闘不能になってしまう。
「どうしましょう、アッシュさま……」




