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45-6

 魔法の刃が疾走し、棍棒のワーウルフを攻撃する。

 しかし、固い体毛の生えた腕で防御され、攻撃はかすり傷程度しか与えられなかった。

 もう一度魔法を――いや、それよりも反撃の回避か!

 ワーウルフが棍棒を再び振り上げる。


「とおーうっ!」


 そこに、マリアが渾身の蹴りをかました。

 がら空きになった棍棒のワーウルフの腹を蹴り飛ばす。

 棍棒のワーウルフが姿勢を崩す。


「我が手に宿れ、光の剣!」


 マリアが魔法で生み出した光の剣を両手で握り、無防備になった棍棒のワーウルフの胸を突いた。

 心臓を貫かれた棍棒のワーウルフは苦悶の表情を浮かべて仰向けに倒れた。


「こんなもんですわ」


 マリアはドヤッとした顔で俺を見ていた。

 なんとも大胆なお嬢さまだ……。

 とはいえ、これでワーフルフを一匹撃破した。

 残りはプリシラが相手をしているもう一匹。


「てやーっ」


 プリシラと血まみれのワーウルフは激しい攻防を繰り広げていた。

 プリシラがロッドを振るい、血まみれのワーウルフは鋭い爪で応戦する。


「プリシラに加勢しますわよ!」


 マリアが光の剣を握って二人の戦闘に乱入した。


「とおーうっ!」


 光の剣を水平に振る。

 血まみれのワーウルフは軽く後ろに退いて回避する。

 そこに、立て続けにプリシラが躍りかかった。


「メイドの一撃ですーっ!」


 至近距離で打ち下ろされる金属のロッド。

 回避した動作の隙をつき、プリシラの攻撃が血まみれのワーフルフの頭部に直撃した。

 頭蓋骨を砕かれた血まみれのワーウルフは、短い断末魔を上げて倒れた。


 静寂が訪れる。

 俺たち三人は少し距離をとって、血まみれのワーウルフのようすをうかがっていた。

 血まみれのワーウルフはうつぶせに倒れたまま動かない。


「や、やっつけたのかしら」

「――炎よ」


 俺は炎の魔法を唱え、血まみれのワーウルフを焼き払った。

 炎にのまれたワーウルフは消し炭となった。

 これで間違いなく倒した。


 前後の挟撃を退けた俺たちはそろって「ふぅー」と息をついた。


「危ないところだった」

「背後にも気をつけなくてはいけませんわね」

「はううう……。すみません。二匹いるのに気づかなくて」


 自慢の耳がありながら、もう一匹魔物がいることを察知できなかったプリシラは落ち込んでいた。

 と、そこで俺は気がついた。


「プリシラ」

「ひゃっ」


 俺がプリシラの頬に指を触れると、彼女は驚いて飛びのいた。


「アッ、アッシュさま!?」

「頬に傷ができてる」


 プリシラの頬には薄い切り傷が一本できていた。

 ワーウルフの攻撃がかすったのだろう。

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