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45-5

「こっちです」


 プリシラを先頭に、彼女と俺とマリアの三人は塔を登っていく。

 途中、破壊された真新しい機械人形や魔物の死体をいくつか見つけた。プリシラとスセリが倒したものらしい。


「それにしても高い塔ですこと」


 マリアが額に浮かんだ汗をハンカチでぬぐう。

 当時の人たちは昇降機で移動していたのだろうが、長い年月を経て朽ちた今は、機械のたぐいはことごとく壊れてしまっており、歩いて登るしかなかった。


 こういった『ビル』と呼ばれる塔を登るのはとても骨が折れる。単純に最上階まで登るのに体力と時間を使うし、途中で魔物や機械人形と遭遇することも多い。なので、浅い階層は調査が済んでいるが、高い階層は未調査という塔は多い。

 この塔もその一つで、高層は未調査だった。

 プリシラとスセリはその調査をしにいき、その途中、崩落に見舞われて離れ離れになってしまったのである。


「みなさん、止まってください!」


 急にプリシラが立ち止まっって俺たちのほうを振り向く。


「魔物の気配がします」


 彼女の頭の頂点に生える獣耳がぴんと立っている。

 忍び足で慎重に歩を進める。

 曲がり角から頭だけを出して、先を確かめる。


「いた。魔物だ」


 曲がり角の先の部屋に魔物がいた。

 ワーウルフと呼ばれるオオカミ頭の人型の魔物。プリシラのような獣人と似ているが、あちらのほうは人間よりも獣に姿が寄っている。そして知性と理性も獣そのもので、話し合いが通じる手合いではない。

 ワーウルフは魔物の死骸を夢中でむさぼっている。

 鋭い牙の生えそろった口の周りが血で赤く染まっている。


 ワーウルフは俺たちに気づいていない。

 先制攻撃をしかけよう。


「アッシュ!」


 そのときだった――マリアが大声を上げたのは。

 後ろを振り返ると、俺たちの背後にもう一匹のワーウルフが立っていた。

 牙をむき出しにし、棍棒を振り上げて。


「はじけ!」


 俺はとっさに防護の魔法を唱えた。

 俺たちとワーウルフの間に魔法の障壁が出現し、棍棒の一撃を受け止めた。

 くそっ、もう一匹いたのか!


 死肉を食らっていたほうの血まみれのワーウルフが今ので俺たちの存在を察知し、グルルとうなりながら襲い掛かってきた。

 プリシラがロッドを振るう。

 一直線に走ってきた血まみれのワーウルフは、プリシラのけん制をよけるため、立ち止まって後ろに飛びのいた。


「こちらの魔物はわたしが相手をします!」

「まかせた!」


 俺は棍棒のワーウルフに手をかざした。

 俺の意思に反応し、魔書『オーレオール』から魔力が流れ込んでくる。


「放て刃!」


 そして手から魔法の刃を飛ばした。

 棍棒のワーウルフは両腕で防御する。

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