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ノノさんと別れてから俺とマリアは冒険者ギルドに戻った。
「アッシュくん! 戻ってきたんだね」
「アッシュさま!」
すると、慌てたようすのオーギュストさんとプリシラが俺たちのところに駆け寄ってきた。
どうしたのだろう。
そういえば、スセリの姿が見えない。
「どうしましたの、お二人とも」
「スセリさまが!」
「スセリになにかあったのか?」
「あ、あのあの、わたしとスセリさまの二人で遺跡を探索していましたら――」
突然遺跡が崩落し、スセリが遺跡内部に閉じ込められてしまったのだとプリシラは早口で説明した。
プリシラは目の端に涙を浮かべている。
「申し訳ありません、アッシュさま」
「プリシラは悪くないさ」
自責の念に押しつぶされているプリシラをなぐさめる。
彼女の目は涙で潤んでいて、泣きだしそうなところをぎりぎりのところでせき止めていた。
「救出にはもう向かっているんですか? オーギュストさん」
「いや、今、救出にいける冒険者を募ろうとしていたところだったんだよ」
「なら、ちょうどい良い頃合いにわたくしたちが帰ってきましたのね」
「今から俺たちでスセリの救出に向かいます」
「すまない。依頼を終えて帰ってきたばかりのキミたちに負担をかけてしまって」
「いえ、スセリは俺の身内ですから。俺が迎えに行くのは当然です」
そうして俺とプリシラ、マリアの三人でスセリの救出に向かった。
道中、プリシラは悲壮な表情をしていたが、正直なところ、俺はそれほど心配ではなかった。
不老の身になってまでしぶとく生きてきたヤツだ。俺の知っている『あの』スセリは、死のうとしても死ぬような人間ではない。今頃は遺跡の奥であぐらをかいて、俺たちが迎えにくるのを退屈にして待っているだろう。
「スセリさま、無事だとよろしいですわね」
「あいつなら心配ない。だから焦ってケガをしないようにな、二人とも」
郊外の遺跡にたどり着いた。
遺跡は『ビル』と呼ばれる、よくある普通の遺跡だった。
ビルは四角いかたちの、とても背の高い塔で、表面には無数のガラス窓がついている。
プリシラによると、遺跡の中ほどまで登ったあたりで崩落が発生したという。
崩落によってプリシラとスセリは離れ離れになってしまい、プリシラはスセリと合流するための迂回路をさがしたが見つからず、助けを呼びに冒険者ギルドに一人戻ってきたのであった。
「魔物や機械人形に襲われていないでしょうか……」
スセリは『稀代の魔術師』だ。
あんな性格だが、本気になれば俺たちが束になってもかなわない実力の持ち主だから平気だろう。
俺たちは塔の内部に足を踏み入れた。




