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マリアがぷんすかしながら詰め寄ってくる。
「アッシュ! あなた、本当に節操のない人間ですわね。出会う女性に片端から言い寄って」
「誤解だ……」
「これでは将来の妻として先が思いやられますわ」
将来の妻、の部分を強調して、プリシラやノノさんにけん制するようにそう言った。
よく見るとマリア、ほくそ笑んでいる。
「将来の妻は気苦労が絶えませんわ。将来の妻は」
さ、三回も言った……。
「そ、それはともかく……。ノノさん。ノノさんの依頼は俺たちが引き受けますよ」
「本当!? ありがとー」
とはいえ、採集の依頼に全員ぞろぞろついていくのも無駄なので、ノノさんの依頼は俺とマリアで、プリシラとスセリは別の依頼を受けることにした。
「報酬はいっぱいあげるわねー。うふふっ」
「ふ、普通で結構です……」
「気をつけるんだよ。採集地の東の森は沼地が多い。しかも底なし沼だ。うっかりはまってしまうと二度と抜け出せなくなるからね」
オーギュストさんがそう警告してきた。
ノノさんが『うっかり』はまってしまわないよう、注意しないとな。
そうして俺とマリア、そしてノノさんの三人で東の森へとやってきた。
森には白い霧が立ち込めていて、陰鬱な雰囲気が漂っている。
空気が湿っていて、地面もぬかるんでいる。
あまり長居したくない、不快な場所だ。
「さっそく見つけたわー」
倒木の前でかがんでいたノノさんが俺たちにキノコを見せてきた。
白い斑点のある、赤いキノコだ。
「このキノコを探してほしいの」
「どのあたりにありますの? ノノさん」
「木の根元や、倒れた木に生えてるわー」
「承知しましたわ」
森には魔物も生息している。
俺たちは慎重な足取りで森の中へと踏み入っていった。
ときどき立ち止まり、キノコを採集する。
「このキノコ、村の近くには生えていないから貴重なのよねー。普段は行商人から買ってるんだけど、あの村にはなんにもないから、行商人はめったに来ないのよー」
「なら、いっぱい採集しませんとね」
「ところでこのキノコってなにを作るのに必要なんですか?」
「傷薬よ。ケガをしたところに塗るとあっという間に治っちゃうのー」
村では男性たちが狩猟をして生活しているから、ケガをすることが多いという。
そのため、ノノさんが錬金術で作る傷薬は重宝されているとのこと。
「ノノさんは村人たちに頼られていますのね」
「えへへー。すごいでしょー。えっへん」
ノノさんは自慢げに胸をそらした。
豊満な胸が強調される。
「アッシュ。どこ見てますの?」
ぎろりとマリアににらまれる。
「い、いや! どこも見てないぞ!」
「ウソおっしゃい!」
「し、しかたないだろ……」
「なんで二人ともケンカしてるの?」
きわどい衣装を着ているにもかかわらず、ノノさんは無自覚で無防備だった。




