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44-6

 マリアがぷんすかしながら詰め寄ってくる。


「アッシュ! あなた、本当に節操のない人間ですわね。出会う女性に片端から言い寄って」

「誤解だ……」

「これでは将来の妻として先が思いやられますわ」


 将来の妻、の部分を強調して、プリシラやノノさんにけん制するようにそう言った。

 よく見るとマリア、ほくそ笑んでいる。


「将来の妻は気苦労が絶えませんわ。将来の妻は」


 さ、三回も言った……。


「そ、それはともかく……。ノノさん。ノノさんの依頼は俺たちが引き受けますよ」

「本当!? ありがとー」


 とはいえ、採集の依頼に全員ぞろぞろついていくのも無駄なので、ノノさんの依頼は俺とマリアで、プリシラとスセリは別の依頼を受けることにした。


「報酬はいっぱいあげるわねー。うふふっ」

「ふ、普通で結構です……」

「気をつけるんだよ。採集地の東の森は沼地が多い。しかも底なし沼だ。うっかりはまってしまうと二度と抜け出せなくなるからね」


 オーギュストさんがそう警告してきた。

 ノノさんが『うっかり』はまってしまわないよう、注意しないとな。



 そうして俺とマリア、そしてノノさんの三人で東の森へとやってきた。

 森には白い霧が立ち込めていて、陰鬱な雰囲気が漂っている。

 空気が湿っていて、地面もぬかるんでいる。

 あまり長居したくない、不快な場所だ。


「さっそく見つけたわー」


 倒木の前でかがんでいたノノさんが俺たちにキノコを見せてきた。

 白い斑点のある、赤いキノコだ。


「このキノコを探してほしいの」

「どのあたりにありますの? ノノさん」

「木の根元や、倒れた木に生えてるわー」

「承知しましたわ」


 森には魔物も生息している。

 俺たちは慎重な足取りで森の中へと踏み入っていった。

 ときどき立ち止まり、キノコを採集する。


「このキノコ、村の近くには生えていないから貴重なのよねー。普段は行商人から買ってるんだけど、あの村にはなんにもないから、行商人はめったに来ないのよー」

「なら、いっぱい採集しませんとね」

「ところでこのキノコってなにを作るのに必要なんですか?」

「傷薬よ。ケガをしたところに塗るとあっという間に治っちゃうのー」


 村では男性たちが狩猟をして生活しているから、ケガをすることが多いという。

 そのため、ノノさんが錬金術で作る傷薬は重宝されているとのこと。


「ノノさんは村人たちに頼られていますのね」

「えへへー。すごいでしょー。えっへん」


 ノノさんは自慢げに胸をそらした。

 豊満な胸が強調される。


「アッシュ。どこ見てますの?」


 ぎろりとマリアににらまれる。


「い、いや! どこも見てないぞ!」

「ウソおっしゃい!」

「し、しかたないだろ……」

「なんで二人ともケンカしてるの?」


 きわどい衣装を着ているにもかかわらず、ノノさんは無自覚で無防備だった。

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