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「いよいよ来週だね。出航の日」
冒険者ギルド。
ギルド職員のオーギュストさんが名残惜しげにそう言った。
「キミたちがいなくなるとさびしくなりそうだ」
「大げさですよ、オーギュストさん。王様に謁見したら、すぐ帰ってきますから」
俺がそう答えると、オーギュストさんは「いいや」と首を横に振る。
「せっかく王都に行くんだ。しばらく滞在して多くのものを見聞きしておくべきだよ。きっとキミたちにとってこれ以上ない経験になるだろうからね」
「そうじゃそうじゃ。そうなのじゃ」
スセリがそれに乗ってくる。
「そうですわ。そうですわ」
それからマリアも……。
どうせ二人は王都観光を楽しみたいだけだろう。
俺はプリシラをと目くばせしあって苦笑いした。
「王さまへの書状のほかに、王都にある冒険者ギルド本部にも手紙を送ったんだ。アッシュくんたちをどうかよろしくお願いします、とね」
「わざわざありがとうございます」
「しばらく本部で依頼をこなしてみるといいよ。キミたちの成長に役立つ」
ケルタスでの活躍が知られれば、国からの依頼も斡旋されるだろうとオーギュストさんは言った。そして国からの依頼を達成できれば、冒険者としての名をますます上げられるだろうと。
「それはともかくオーギュストさん。今日は俺たちあての依頼は来ていませんか?」
「キミたちへの指名は今日はないね。ただ、熟練の冒険者に任せたい難しい依頼がいくつかあるから、掲示板を見てもらえないかな」
そう促され、依頼掲示板へと足を運ぶ。
掲示板にはケルタス中から集まってくるさまざまな依頼が紙に書かれて貼られている。
その最上部に、難易度の高い依頼が掲載されていた。
街道に出没する凶悪な魔物の討伐。
未踏の遺跡の探索と地図の作成。
有力貴族の屋敷の警護。これには依頼者からいろいろと注文が書かれている。身なりの良い服を着ろだの、品性のある者を求めるだの。
「どれにしようか……」
「アッシュさま! これ!」
プリシラが驚きの表情で依頼書の一つを指さした。
その依頼は近郊の森での錬金術素材の採集護衛だった。
なんの変哲もない、普通の護衛依頼だ。
どうしてプリシラは驚いているのだろう。
「依頼主のお名前を見てください!」
「え――あっ!」
依頼主の名前を見て、俺も声を上げてしまった。
依頼主は――ノノさん!?
「お知り合いですの?」
そうか。マリアはノノさんと面識がないのか。
俺は田舎の村で暮らす錬金術師ノノさんについてかんたんに説明した。
燃えるように赤い、長い髪が特徴的で、ちょっと天然な性格の女性。
そして巨竜アスカノフを従えている。
「竜を従えた錬金術師……。なんだかすごそうな方ですわね」




