表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

304/842

44-2

 その夜、俺は真夜中にふと目が覚めた。

 もう一度寝ようと目を閉じるも、なかなか寝つけない。

 完全に目が冴えてしまった俺は、寝るのをあきらめた。


 部屋を出て、暗く静かな廊下を歩く。

 歩くたびに床のきしむ音がする。

 裏口から庭に出る。


 ――そこに、銀髪の少女がいた。

 少女は古びた書物を片手に持ち、満月の飾られた夜空を仰いでいる。

 月明りに銀色の髪が輝いている。

 はかなげな表情をした横顔。

 美しい絵画のような光景に神秘性を感じた俺は息をのんだ。


「……スセリ」

「ん? なんじゃ、アッシュか」


 銀髪の少女――スセリがこちらを向いた。


「なにをぼけっと立っておる」

「い、いや……」


 スセリに見とれていた――とはさすがに言えなかった。

 しかし驚いた。まさかこんな時間のこんな場所でスセリと出くわすなんて。

 スセリのほうも、まさか俺と会うなんて思いもよらなかったと言いたげな顔をしていた。


「スセリも眠れないのか?」

「いんや。ワシはベッドに入って目を閉じれば一瞬で眠れるのじゃ」

「う、うらやましいな……」

「夢の中を自由に動くことができて、自分の意思で起きようと思えば起きれるのじゃ。のーじゃじゃじゃっ」

「それも『稀代の魔術師』だからか」

「いんや、これは普通の人間でも訓練すればできるのじゃ。おぬしに伝授するのじゃ」

「べ、別にいい……」


 のじゃのじゃ言い出した途端、彼女からはかなさやら神秘性やらが一瞬にして消え失せた。

 スセリ……。黙っていればきれいな女の子なんだがな。


 しかし、眠れないわけではないのなら、スセリはここでなにをしていたんだ?

 しかも手に持っている書物は、彼女に預けた魔書『ゴスペル』だ。

 俺の疑問に視線で気付いたスセリは「これか?」と『ゴスペル』を持ち上げた。


「ワシはこれを処分するために待っておったのじゃよ」


 処分?

 待っていた?

 不穏な言葉がスセリの口から出てくる。


「魔法の力は本人の魔力だけではなく、場所や時間も影響を及ぼすことは知っておるな?」

「『オーレオール』に書いてあったな」

「時間はとりわけ、日付の変わる時刻に近づくにつれ、魔法の力を高める。やはり日と日の境目というのは不思議な力を持っているのじゃろう。ワシは日付が変わる時間を待っておったのじゃ」


 外の出る前、部屋の時計を見たときは、日付の変わる時刻に近かった。

 そろそろ日付が変わるころ。


「まもなくじゃな」


 スセリが懐中時計に目をやってつぶやく。

 それから『ゴスペル』を空高くに掲げた。

 その格好のまま、しばらくたたずむスセリ。

 雲がはれて満月が完全姿を現したそのとき、スセリはこう唱えた。


「滅せよ!」


 魔書『ゴスペル』はスセリの手から離れて宙に浮き、そして――発火した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ